目を開けた瞬間、視界の中に見覚えはあるがまだなれない天井が飛び込んでくる。
「……あれ?」
 それを見た瞬間、キラは思わず首をかしげてしまった。
「ワープ、したわけじゃないよね?」
 自分が意識を取り戻す前の最後の記憶は、青い空だったのに。そう心の中で呟く。
 あまりの眠さに、どうしても部屋にたどり着けなくて、芝生で寝っ転がったのだ。しかし、そうしたら空がまぶしくて、本でごまかした記憶がある。
 それなのに、どうして自分はここにいるのだろう。
 そんなことを考えながらキラは体を起こす。
「お、起きたな」
 その瞬間、聞き覚えのない声が耳に届く。
 反射的に視線を向ければ、鮮やかな金色の髪が見える。
「……あの……」
 あなたは? とキラは首をかしげながら問いかけた。
「お前のルームメイトだってさ」
 眠ってたから、そのまま運ばせて貰った……と彼は笑う。ついでに、使われた形跡のない方に勝手に居座らせて貰っている。そうも続ける。
「す、みません」
 またやってしまったか、とキラは心の中で呟いた。それで彼に迷惑をかけたのではないか、ということもわかった。
「いや。疲れてたんだろう?」
 一応フレッド教官から事情は聞いているから、と彼は続ける。
「凄いよな。その年で、もう、みんなに認められているんだから」
 この言葉が、妙にくすぐったく感じられた。
「……僕には、それしか取り柄がないから」
 このプログラミング能力があるからこそ、こうしてアカデミーに入学できたのだ。もちろん、それだけではない。あの人達の助力があったことも知っている。そして、彼等の思惑も、だ。
 でも、それも全てはこの才能のせいだろう……とキラは思っている。
「そんなの、わからないだろう?」
 だが、彼はいきなりこう言ってきた。
「あの……」
「まだ、授業も始まっていないんだしさ。他に何か得意なことがあるかもしれないだろう?」
 何もわからない家からそんなことを逝ってどうする、と続ける彼に、どんな表情を返せばいいのだろうか。
 それ以前に、自分は彼の名前も知らない。
「……どうかしたか?」
 キラの表情から何かを察したのだろう。彼がそう問いかけてくる。
「あの、名前……」
 まだ、聞いてない。キラはもそもそとそう付け加えた。
「あ〜〜」
 言われてみればそうか。そう言いながら、彼は頭をかく。
「俺の方は、お前の名前を聞いていたから、お前も知っているもんだと思っちまったんだよな」
 悪い、と彼は素直に謝罪の言葉を口にする。
「いえ……僕の方も妙なところを見られてしまいましたし」
 だから、お互い様だ。そう言い返すものの、どう考えても自分の方が分が悪いような気がしてならない。
「そこまで堅苦しく考えなくていいって。これからは、いやでも毎日顔を合わせるだけじゃなく、寝食、共にするんだしな」
 もっとも、キラが開発局に言っていないときは、だが……と彼は付け加える。どうやら、そこまでフレッドは彼に話をしていたようだ。
「俺はミゲルだ。ミゲル・アイマン。で、お前のフルネームは?」
 教えてくれるんだろう? と彼は付け加える。
「キラ・ヤマトです」
 それに、素直に言葉を返す。
「よろしくな、キラ」
 言葉とともに手が差し出される。
「はい。よろしくお願いします」

 即座に、キラは彼の手を握りかえした。

 これが、二人の出会いだった。



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