イザークの指先が肌の上を滑るたびに、キラが小さく体を震わせている。
「キラ……」
 その様子が可愛い、と思う。同時に、小さな笑いがこぼれ落ちてしまった。
「イザーク、さん?」
 それが耳に届いたのだろう。不審そうにキラが問いかけてくる。しかし、その声が掠れていたのは間違いなく快感のせいではないか。
「何年でも待てる、と思っていたんだがな」
 キラがその気になってくれるまで、と囁きながら、耳の後ろに唇を押し当てる。そのままさらに言葉を重ねた。
「実際に触れてしまえば、このざまだ」
 唇の動きがくすぐったいのか。キラは小さな笑いを漏らす。
「大丈夫。ちゃんと感じている」
 その事実に安心しているのは自分の方かもしれない。
 少なくとも、これでキラに苦痛だけを感じさせなくてすむだろう。
 そんなことを考えながら、前に回していた手をゆっくりと下に移動していく。
「……イ、ザーク、さん?」
 自分の中心に触れられたから、だろうか。キラが困惑に満ちた声あげる。
「こちらも反応をしている」
 ただ、その欲求が薄かっただけだな、とそう言いながら、布の上からそれの形をなぞるような刺激を与える。
「んっ」
 それだけで、キラのそれは固さを増していく。
「恥ずかしがるな。誰でもこうなる」
 自分だってそうだ、と口にしながら、イザークはキラの腰に自分のそれを押しつけるようにした。
「……あっ」
 何もしていないのに、そこが姿を変えているのが伝わったのだろう。キラは驚いたような声を上げる。
「だから、そんなに不安そうな表情をするな」
 大丈夫だ。
 キラがどんな反応を見せても嫌いにならない。
 そう囁きながら、そっと布の下へと指を滑り込ませていく。
 その瞬間、キラは体をすくめた。
 しかし、彼は決してイザークの手を振り払おうとはしない。
「愛している、キラ」
 そんな彼の耳元で、思いをこめながらイザークはこう囁いた。

「うまくやっているかな、あいつ」
 帰ってくるなって言われたから、やってるんだろうけど……と呟きながら、ディアッカは手を動かしている。
「失敗したら、その時はイザークをこの任務から外すだけだ」
 さらりととんでもないセリフを聞かされたような気がするのは錯覚だろうか。
「それは公私混同って言わないか?」
 あきれたようにフラガが言葉を口にする。
「何。その位は構わないだろう。言っては何だが私にとって見ればイザークよりもキラの方が大切だ」
 あの子が幸せになるためなら、多少の非難は気にしない。そうも言い切る。
「何よりも、あの子はアスランのせいで臆病になっているからね」
 外堀から埋めた方がいいのではないか。そんなことも続ける。
「わかっているって。だから、俺もたきつけたんだけどな」
 カガリも同様だ、とフラガは笑う。
「アスランの奴、何をやらかしたんだ?」
 思わず、ディアッカはこう呟いてしまった。
「アスランって、どんな奴?」
 それで、ディアッカが彼を知っていると気付いたのだろう。シンが問いかけてくる。
「聞いてどうするんだ?」
「気に入らない奴だったら、後でぶん殴りに行ってこようかと」
 この言葉に、ディアッカは思わず苦笑を浮かべてしまう。
「やめておけって」
 あいつは強いぞ、とそうも付け加えた。
「一応、俺たちの中ではトップだったからな」
 実力だけはある。だが、人間としてはあまり面白味がないように感じていた。しかし、とディアッカは付け加える。
「キラの話を聞いていると、そう思えなくてな」
 だから、キラが関わってくると違うのではないか。
「……イザークという例もあることだしな」
「それは……そうかもしれませんね」
 最初にあった頃より、彼は丸くなっている。だから、と続けるシンの言葉に、ディアッカは別の意味で苦笑を浮かべた。
「何にせよ、あの二人にとって今の関係がプラスになってくれればいいよな」
 自分としてはそれに力を貸すつもりだ。こう続ければ、
「俺だってそうです」
 とシンも頷いてみせる。
「キラさんは、いつも自分のことを二の次にしているから」
 見ていて歯がゆかった、と彼は続けた。彼に自分はたくさん、幸せを貰ったのに、とも口にする。
「というわけで、さくさくと作業を進めるか」
 これが終われば、キラはとりあえず安全になるだろう。そういうと、ディアッカは意識を手元に戻した。