作業をキラに見られなかったのはよかったのだろうか。しかし、シンにはしっかりとばれてしまった。 「……ディアッカさんって、最低ですね……」 話を聞き終わった彼が、あきれたようにこう口にする。 「キラさんのこと、相談して失敗したかな」 さらに、彼はこうも付け加えた。 「だが、それだけに経験だけは豊富だぞ。無駄に、な」 困ったことにな、とイザークも苦笑と共に言葉を告げる。 「……それは、そうかもしれないけど……」 でも、何か、やだ……とシンはため息とともに告げた。 「キラさんに、それが移ったら、どうしよう……」 さらに、こんなセリフを口にする。確かに、それは自分も嫌だ……とイザークは心の中で呟く。だが、とすぐに思い直す。 「大丈夫だ。キラとこいつとでは性格が違う。もう少し自分勝手になってもいいとは思うが……キラがこいつのようになることはないはずだ」 その前に、自分が阻止してみせる……と心の中だけで付け加える。 「そう、ですよね」 シンもキラの性格を思い出したのだろう。どこかほっとしたような表情で頷いている。 「キラさんがこいつみたいになるはずがないですよね」 でも、とシンはディアッカをにらみつけた。 「あんたのせいで、キラさんに迷惑だけはかけないでくださいね?」 そして、こう告げる。 「……わかってるって」 今回も、逆恨みっぽいんだけどなぁ……とディアッカは肩をすくめてみせた。自分から声をかけたことがない、ともそのまま口にした。 「……あんたを早々に遠ざけて、イザークさんにアタックしようって言うだけじゃね?」 踏み台にしようとしているとか、とシンは言う。 「お前なぁ」 「あぁ、でも、そっちは大丈夫か。最近、俺やレイが側にいないときには、イザークさんがキラさんの側にいるじゃん」 だから、と意味ありげに彼は笑った。 「それが眼福だから、眺めるだけにしておこうって話になっているらしい」 クラスメートが教えてくれた、とその表情のまま付け加える。 「ついでに、ツーショットで写真を撮ってこいって言われたけど……どうする?」 写真を撮ってもいいのか、と彼は問いかけてきた。 「写真だけなら、な」 その位で周囲との摩擦を避けられるのであれば、構わない。もっとも、そのせいで厄介な状況になる可能性は費てきできないが、それは対処可能な範囲なのではないか。 流石に、正式な訓練を積んだ連中が一個小隊来られたら自分たちでは支えきれないだろうが。しかし、ここがオーブのカレッジである以上、そんな危険を冒す連中はいないのではないか。 「それと……撮影するのは、お前だけだぞ」 でないと、鬱陶しい事になりかねない。そうも付け加える。 「わかった。じゃ、後はキラさんの許可だな」 「その前に、こっちを手伝ってくれ」 キラが帰ってくる前に終わらせたい。そう告げれば、シンは頷く。 「何をすればいいんだ?」 「とりあえずディアッカの背中に乗って、壁のあそこに、このセンサーを取り付けて欲しい」 そこから読み取ったデーターから侵入者仮装ではないかを判別させるから、とイザークは付け加える。 「俺がやってもいいんだが……ディアッカがごねてな」 「当たり前だろう。お前は重いんだから」 相手が女性なら、どれだけ重くても意地を見せるけどな……とディアッカは反論をしてくる。 「作業に必要だろうが!」 それで終わらなければどうするつもりか? とイザークはディアッカを怒鳴りつけた。 「……だってなぁ……」 ぶつぶつと言いながらも、ディアッカはシンを呼び寄せる。 「これをつければいいのか?」 「あぁ。ピンがあるから、それを境目に押し込んでくれ」 そうすれば固定されるはずだ、と口にしながら、彼はシンを肩に乗せた。そうすれば手が届かなかった場所にそれを押し込むことが出来る。 「後、二カ所ぐらいかな、これは」 そうしたら、後は設定だけだから、とイザークも口にした。 「りょーかいです」 いっそのこと、寮の入り口にもつけたい気分だ、とシンが呟いている。 「そうすれば、厄介な奴が来たときに早々に逃げ出せるもんな」 自分もキラも、と彼はさらに言葉を重ねた。それがいいかもしれない、と一人で結論まで出してしまったらしい。 「これって、プラントなら入手可能なんですか?」 「……って言うか……イザークの実家の特注品」 そういうものを作っている企業を持っているんだよ、あいつん家は……とディアッカがフォローをしてくれる。実際には、ザフトが開発したものだから、入手は不可能だろう。 「……デュランダル博士なら可能かもしれないけどな」 ぼそりと、イザークは呟いてみる。目的が目的だから、彼が許可を出す可能性もあるし、と心の中で呟いた。 「そうしてみる」 言葉とともに、シンはディアッカの肩から飛び降りた。 「で、後は?」 「こっちだ」 そんな彼を案内してディアッカが移動していく。 「これで、キラが戻ってくる前に終わるな」 二人の後ろ姿を見送りながら、イザークは小さな声でこう呟いていた。 |