しかし、ディアッカを捕まえられたのは夕食後のことだった。
「……貴様は……」
 しかも、その理由が理由であるが故に、イザークの怒りを買ったことは言うまでもないことだろう。
「いいじゃないか。デートの一つや二つ」
 これだって、立派な情報収集だ。開き直ったのか。彼はさらに言葉を返してくる。
「TPOを考えろ!」
 必要なときに連絡が取れないようでは意味がない。イザークは言葉とともに彼をにらみつけた。
「……はいはい、悪かったって……」
 でも、と彼は言い返してくる。
「まったく……」
 お前はそういう奴だ……とイザークはため息とともに言葉を吐き捨てた。
「まぁ、いい。今日の所は何も起きなかったようだから、な」
 だが、次もそうだとは言い切れない。何よりも、キラのことで助力が必要になったときに困るだろう。
 口調を変えるとこう告げる。
「……確かに……そう考えれば、俺のミスか」
 優先順位はキラのことか、と彼はあっさりと引き下がった。
「そう言うことだ」
 お楽しみはその後でいいだろう、と言い返す。もちろん、それはイヤミだ。
「イザーク……悪かったって……」
 言葉とともにディアッカが頭を下げる。その様子に、これ以上、彼をいじめても時間の無駄だ、とそう判断をした。あるいは、デートというのも口実かもしれないと、おそう判断をする。
「フレイ・アルスターが、今日、俺の所に突撃してきた」
 だから、さっさと本題に入る事にした。
「俺たちが恨まれているそうだ」
 襲撃計画があると言われたぞ、とため息をつく。
「へぇ」
 面白そうじゃん、と彼は笑う。
「てっきり、あちら関係か、と思ったが……お前の行動を見ていると、本当に、学生に恨まれている可能性も否定できなくなってきたな」
 そんな風に節操のないことをしているなら、とイザークは付け加える。
「……そうは言うが……俺から声をかけたことはないぞ?」
 全部、あちらからだ……とディアッカは言い返してきた。
「恨まれるなら、女の方だろう?」
 自分は悪くない、と彼はさらに言葉を重ねる。
「……自分が振られたわけじゃない、と思っている男に、そんな理由が通用するか」
 悪いのは、全部、コーディネイターだ、と言われたらどうするのか? そう聞き返す。
「あぁ。そうやって、自分を慰めると」
 そんなことをするから、バカなんだろうが……とディアッカはため息をつく。
「でも、それでキラ達にとばっちりが行ったら困るか」
 しかし、断っても女の方に逆恨みされかねないな……と彼は続けた。
「それは、お前の断り方が下手だから、だろう?」
 自分は、そんな風に逆恨みされたことはない。イザークは言い返す。
「そりゃ、お前はな……」
 性格的なものもあるだろうからな、とディアッカは言葉を濁した。しかし、それ以外の理由があるように思えるのは気のせいか。
「まぁ、高嶺の花は高嶺の花で眺めるだけにしておきたいんだろうよ」
 ともかく、と彼は続ける。
「それに関しては、何とかしておくさ。婚約者を押しつけられた、とでも言っておけばいいだろう」
 誰も調べようがないからな、と彼は笑った。
「一応、根回しはしておけ」
「だな」
 後は……と彼は視線を窓の方へと向ける。
「セキュリティを強化、か?」
「確かに。とりあえずは、外から侵入を出来ないようにしておくべきだろう」
 この前のことがあるから強化されているとは思うが、とイザークも頷く。
「どこに共犯がいるかわからないからな」
 寮内にいられたら、外を固めても意味がないか……とディアッカは呟く。
「ついでに、キラの身の安全もはからないといけないだろう」
 だが、そうなれば本人にばれる可能性がある……と彼は続けた。
「……やはり、デュランダル博士に相談をするしかないだろうな」
 しかたがない。アポを取ってくるか。こう呟きながらイザークは腰を上げる。
「あぁ、付き合う」
 ついでに、今までわかっているデーターも彼と共有しておいた方がいいだろう。ディアッカのこの言葉に、イザークも頷き返した。
「……そういえば、寮内の人間の身元調査はどこまで進んでいるんだ?」
「半分って所だろう」
 ここにいるのは、オーブ本土出身者だけではないからな。そう言われてしまえば反論も出来ない。
「もどかしいものだな」
「まぁ……それに関してはニコル達が何とかしてくれるのを待つしかないだろうよ」
 彼であれば、うまく誰かから聞き出してくるだろう。そう告げる。
「だといいがな」
 頷き返すとイザークは歩き出した。