「とうとう、自爆したって訳か」
 イザークの話を聞いた瞬間、ディアッカは遠慮なく爆笑してくれる。
「……うるさい!」
 自分だって、そんなことをするつもりはなかったんだ。それなのに、体が勝手に動いてしまったから……とイザークはいいわけにならないいいわけを口にした。
「キラに嫌われてなきゃいいけどな」
 だが、そんな彼にディアッカはしっかりと追い打ちをかけてくれる。
「……貴様……」
 本気で殺してやろうか、と思ったことは否定しない。
「まぁ、こっちも予想外のことがあったけどな」
 そう言いながら、彼は一枚のディスクとメモを差し出してくる。
「これは、誰からだ?」
 それらを見た瞬間、思い切り顔をしかめながらイザークは問いかけた。
「別任務でアスラン達が潜入している」
 ディアッカからの返答を耳にした瞬間、思い切り顔をしかめてしまったのは言うまでもないことだ。
「……何をしに……」
 自分たちが頼んだデーターを持ってきてくれたのだろう。それはわかっている。しかし、相手が《アスラン・ザラ》と言うのが気に入らない。
「さぁ、な」
 でも、とディアッカは何かを思い出したかのように言葉を重ねる。
「あいつ、キラと接触禁止だそうだ」
 だから、少なくとも彼の前に姿を見せることはない。
「……訳がわからん……」
 どうして、そのようなことになっているのか。個人的に面白くはないが、別に構わないのではないか。そうも思うのだ。
「幼なじみだそうだ、あの二人。そのせいで、厄介なのに目をつけられているらしい」
 下手に接触をすると、キラの身に危険が及びかねない。そうも言っていた。
 ディアッカはさらにこうも付け加える。
「……なるほど……」
 今日会ったユウナの様子を見ていればだいたい想像が付く。
「プラントにキラをとられるとまずいと思っている連中がいるわけだな」
 オーブの首長家に、とそう続ければ、ディアッカも頷いてみせた。
「月にいた頃に、さんざん、ちょっかいをかけられたそうだ」
 キラから引き離そうとするかのように、と言う言葉に、その思いを強める。
「厄介だな」
 おそらく、今日のことで自分も警戒対象に含まれているのかもしれない。
 救いがあるとすれば、ロンド・ミナ・サハクから嫌われていないことだろうか。
「まぁ、お前の話を聞いて納得できたけどな」
 ディスクの中身を確認してみな? とどこか楽しげにディアッカが言ってくる。
「……今か?」
「今の方がいいと思うぞ」
 後にしようとすると、キラが来るかもしれないからな……と彼は続けた。
「そうかもしれないな」
 確かに、今の時間はキラが確実にいないとわかっている。しかも、デュランダルも一緒だから彼の身に危険は及ばない。だから、と思いながら、自分用に使っているノートパソコンを起動させる。そして、データーカードをスロットに差し込んだ。
「……暗号化してあるのか」
 まぁ、誰に見られるかわからない状況だからしかたがないのか。
 そう思いながら、それを解除していく。
「……おい……」
 モニターに映し出された文章を読んだ瞬間、思わず吹き出しそうになってしまう。それを必死にこらえながら、イザークは口を開いた。
「思い切り私怨が入っていないか?」
 アスランの、と付け加える。
「それだけのことをされたって事だろう」
 月にいたと言うことなら、幼年学校時代だろうから……とディアッカは言い返してきた。
「どうだろうな。キラはスキップしたと言っていたぞ」
 ひょっとしたら、アスランも一緒だったのだろうか。
「……だが、完全にセイランは敵だ、と思っていいだろうな」
 しかし、相手がオーブの中枢にいる相手であるが故に対処が厄介だ。
「……そのあたりの話を シンにでも聞いておくか」
 ついでに、カガリ、と言う人物についても……とそっと心の中だけで付け加える。
「そうだな。キラの交友関係については、あいつが一番詳しいだろうし」
 幸か不幸か、口実もあるだろう? とディアッカは意味ありげに笑った。
「口実?」
 一瞬悩むが、すぐに答えを見つける。
「そうだな。当人に絡まれた以上、情報収集は大切か」
「そう言うことだ」
 にやりと笑う彼にイザークも似たような笑みを返した。