ミナから渡されたディスクの中身を確認してみれば、セイランをはじめとした者達と大西洋連合との癒着の証拠が記されていた。 「……これは……協力して貰ったと言うことなのか?」 カガリとともにそれを見ていたアスランがこう呟く。 「あるいは……私がどう出るかを確認している……と言うべきか」 どちらにしても、その結果でサハクがどう動くかを決めるつもりなのではないか。そんなことも考える。 「相変わらず本心が見えない方だ」 それでも、とカガリは呟く。現状では彼女がくれたこれらのデーターはありがたい。 だからといってこれを鵜呑みをするわけにはいかないだろう。まずはこれらの裏付けを取らなくては。この中にフェイクが入っていないとは言い切れないのだ。 「本当……キラがいてくれたらな」 手分けもできるんだが、とアスランは言いかけて、すぐに言葉を飲み込む。 「カガリの相手をしてもらえるのにな」 代わりにこんなセリフを投げつけてくる。 「何だ、それは」 自分は自分は誰かに相手をしてもらわなければいけない年齢ではないぞ……とカガリは心の中で呟く。 だが、とすぐに思い直した。 「お前は付き合ってくれないのか?」 そして、アスランの出方を確認するために、彼女はこんなセリフを投げつける。 「付き合ってやりたくても、今は無理だ」 これの裏付けを取らなければいけないのだろう? とアスランは聞き返してきた。 「他の誰かにやらせるわけにはいかないだろうし、な」 万が一、その相手が――直接ではなくとも――セイランをはじめとした三家につながっていたらどうする、と彼は言葉を重ねてくる。 「それはそうなんだが……不安なんだ、私は」 無条件で信じられる存在はアスランしかいない。その事実はもちろん、どこに監視の目がいるかわからないという状況も……とカガリは訴える。 「……今だけでいいから……」 言葉とともに、カガリはアスランを見上げた。 「しかたがないな……」 そうすれば、アスランは小さなため息を吐く。そして、微かに両手を広げてみせた。 「今日だけ、だぞ」 まったく……と口にしながらも、それでも彼はカガリを抱きしめてくれる。 「……わかっている」 取りあえず、これだけで満足しなければいけないのだろうか。それとも……といろいろ考えながらも、取りあえず、今自分を包み込んでくれる温もりに酔っていた。 もう、二度とこの光景は見たくなかった。 それがキラの偽らざる本心だった。 「大丈夫か?」 そんなキラの気持ちを察したのだろうか。そっとカナードが肩に手を置いてくる。 「見たくなかったら目をつぶっていろ。抱いて運んでいってやるから」 その状況で、こんなセリフを耳元で囁かれた。 「大丈夫だよ」 しかし、先ほどの戦闘で疲れているであろう彼にそんなことをさせるわけにはいかないような気がする。だから、キラは何とか口元に笑みを浮かべるとこう言い返す。 「お前一人を抱え上げてフルマラソンできる程度の体力は残っているぞ」 もっとも、その程度でごまかされてくれる相手ではない。苦笑とともに彼はこんなセリフを返してきた。 「本当に、大丈夫」 心配してくれてありがとう、とキラは言葉を重ねる。 「でも、僕がこの光景から目をそらすわけにはいかないから」 ここにいるのは、この世界に生まれることを許されなかった自分たちの《きょうだい》だ。 そして、彼等をそんな目に遭わせたのは自分の父だから。 吐息とともに言葉をはき出せば、カナードは慰めるようにキラの肩を自分の方へと引き寄せる。 「そうだな」 確かに、自分たちがこの光景から目をそらしてはいけない。そうく地にするカナードの指に少しだけ力がこもった。 「ほんの僅かでも状況が変わっていれば……俺もお前も、あそこに並んでいた可能性はあるからな」 だからこそ、彼等を好奇の目で見る連中から隠さなければいけないのだ。カナードはそうも付け加える。 「そうだね」 しかし、彼等の存在があったからこそ、自分たちが今この場にいると言うことも否定できない。そして、これから新しい命が生まれる可能性だってある。 だからこそ、自分に何ができるのかをしっかりと考えなければいけないだろう。 自分のためではなく、彼等の存在のために一番いい方法は何なのか。そして、おそらく今後さらに次世代を生み出すことがむずかしくなっていく同胞のために、だ。 でも、と思う。 もう二度と、自分やカナードのような存在は生み出されて欲しくはない。 最高のコーディネイターとはいえ、自分も彼も、普通の人間なのだ。それなのに、特別扱いされるのは辛いだけだと思う。 第一、自分の何が《最高》なのか、未だにわからないのだ。 そんな曖昧な存在のために無駄な労力を使うよりも、少しでも多くの命がこの世に誕生できるようにして欲しい。 「……結局、答えは出ていたのかな?」 ここをどうするかなんて、とキラは小さな声で呟く。 「キラ?」 「……迂闊な人がここには入れないように、封印しよう。本当に信頼できると思う研究者に出逢えるまで」 もっとも、そんな人たちがいるのかどうかはわからないけど……とキラは苦笑とともに付け加える。 「そうだな。それがいいだろう」 彼の言葉にカナードも頷いてくれた。 |