今でも武器を見るのは恐い。
 だが、ここではそういっていられないこともわかっている。
「……みんなに、あまり迷惑をかけるわけにもいかないし、ね」
 そういって微笑みを向ければ、フレイとレイはそろって不安そうな表情を作った。何故かそういているところを見れば、自分よりも二人の方がよほど《きょうだい》の様に見える。
「でも、キラ……」
「そうですよ。食事くらいでしたら、俺が運んできますから」
 無理だけはするな、と二人とも口をそろえて告げてきた。
「でも……部屋の中にだけいても気が滅入るだけだから……」
 だから、少しは気分転換もしたい、とキラは言外に付け加える。
「それはそうかもしれませんが……」
 キラの気持ちもわかる。だが、それでも不安を消せないのだ……とレイの瞳が如実に告げていた。
「本当に大丈夫?」
 具合が悪くなったら、すぐに言うのよ……とフレイも言ってくる。
「わかっているよ」
 無理をする方がみんなに迷惑をかけてしまうから、とキラは苦笑を浮かべななら告げた。
「……本当に姉さんは……」
 この言葉にレイが何かを言いかけてやめる。
「カナード兄さんがいてくれるのが一番いいんですけどね」
「確かに」
 レイの言葉にフレイも頷いてみせた。
「あの人に後ろでにらんでいて貰えば、キラも大人しくしたがうものね」
 もっとも、こちらの言葉が正しいときだけかもしれないが……と彼女は付け加える。後、事前に話し合っておかないといけないかしら、とすらすらと出てくるところから判断をして、既に経験済みなのだろうか。
「……フレイ……」
 何をしたのか、とキラは思う。
「キラがきちんとしてくれていれば何もしないわよ」
 食事を抜くとか、おやつしか食べないとか……とフレイに言われて、キラは思わず視線を彷徨わせる。思い当たる節は山ほどあるのだ。
「ともかく、食べてくれる気になったのなら、それでいいわ。虫除けを用意しておけばいいだけでしょう?」
 食堂に行く途中で声をかければいいだろうか、とフレイは首をかしげている。
「イザークとディアッカさんなら……お仕事中じゃないの?」
 邪魔しては申し訳ない、とキラは付け加えた。
「あの二人の方が確実だけど、今日は他の人よ」
 バルトフェルドでも頭が上がらない人だ、とフレイは微笑む。
「それと、ラクスさんとカガリさん」
 指を折りながらこう続ける。
「カガリと仲良くなったの?」
「そういうわけじゃないわ。でも、キラのことなら普通に話せるから」
 イザークと同じような関係だ、とフレイは笑った。
「大丈夫ですよ。カガリさんは……女性には優しいですから」
 それはそれで問題だと思うのは自分だけなのか。しかし、フレイもレイも当然だというような表情を作っている。
「そういうことだから、キラを見張っているのよ」
 一人で勝手に出歩かせないでね、と言い残すとフレイは部屋から出て行く。
「……過保護……」
 フレイの過保護ぶりがさらに酷くなってきているような気がするのは錯覚だろうか。
「まぁ……諦めてください」
 今、ちょっとぴりぴりしているから……とレイが教えてくれる。
「何かあったの?」
「というか……バカがラクス様とキラさんとフレイさんを盗撮しようとしてカガリさんとアイシャさんに見つかっただけです」
 その後、どのような騒ぎになったのかは言わなくてもわかるだろう、とレイは言外に付け加えた。
「……その人、生きてる?」
 カガリだけではなくイザークの怒りも買ったのであれば、病院送りぐらいは当然だろう。ナチュラル相手であれば、カガリ一人で十分だと言うことは、オーブでは公然の秘密だからだ。
「死んだという話は聞いていません」
 もっとも、死んだ方がマシだという状況に置かれている可能性は否定できないが……とレイは笑った。
「ラクス様のファンは、病院にだってたくさんいますしね」
 どうやら、キラもこの基地内では人気らしい。フレイもナチュラルにしてはコーディネイターに対して偏見を持っていないからそれなりにファンがいるらしいし、と彼は付け加える。
「嘘でしょ?」
 信じられない、とキラは呟く。
「本当ですよ」
 さらりとレイは言葉を返してくる。
「もっとも、イザークさんがいらっしゃいますから、手出しをしようというバカはいませんけどね」
 そんなことをしたら、社会的に抹殺されるでしょうから……と彼は笑う。だから、あの犯人もそうなるのではないか、とも付け加える。
「……そこまでしなくても……」
「この場にカナード兄さんがいたら、間違いなく命もなかったと思いますけどね」
 この一言に関しては、どうあがいても否定する要素を見つけられないキラだった。