「わたくし、こんなに大勢の方とお食事ができるとは思いませんでしたわ」
 ラクスが微笑みとともにこう告げる。
「だからといって、友達になりに来たなんて思わないでね」
 キラ以外のコーディネイターなんて、嫌いなんだから! とフレイが言いきった。
「フレイ……」
 別に、今、そのようなことを言わなくても……とキラは思ってしまう。
「それでも、お友達になって頂ける可能性はあるわけですね」
 しかし、ラクスの方は微笑みながらこう言い返している。
「なんで、そう言えるのよ」
 キラ以外のコーディネイターは嫌いだって言っているでしょう! とフレイはラクスをにらみつけた。
「フレイ、落ち着いて」
「そうよ。話を聞きに来たんでしょう?」
 慌ててキラとミリアリアが彼女を止める。
「……そうなんだけど……」
 でも、とフレイは呟く。
「フレイ様がキラ様をお好きなのは、キラ様というお方の本質を見てそう思われたのでしょう? コーディネイターであるとかナチュラルであると言ったこだわりよりも、キラ様の本質の方がフレイ様には重要だったと言うことですわよね」
 笑みを深めながらラクスは静かに言葉を綴り出す。
「それは、フレイ様が相手の本質をよくご覧になれるからですわ」
 ほめられているとわかったのか。少しだけフレイの態度が和らぐ。
「ですから、わたくしにもお友達になれるかもしれないチャンスを与えられている、とそう思いたいのですわ」
 いけませんでしたか、と首をかしげてみせる彼女にフレイもとりあえず納得をしたようだ。
「勝手にすればいいわ」
 こう言うとキラとミリアリアの間に腰を下ろす。
「ごめんね、ラクスさん」
 まさか、最初からこういうことになるとは思わなかった。そう思いながら、キラは苦笑を浮かべる。
「お気になさらず。フレイ様がキラ様のことが本当にお好きだから、ですわ」
 だから、見ていて本当に微笑ましくなった……と彼女は言葉を返してきた。
「ラクスさん」
「お互いが友達にはなれなくとも、相手の本質を見られるようになれば……人種を理由にした戦争はなくなるのかもしれませんわね」
 小さく付け加えられたこの言葉は、彼女の本心なのかもしれない。
「ともかく、ご飯、食べよう?」
 少しでも雰囲気を和らげようとキラはこう提案をする。
「そうね」
 そうしましょう、とミリアリアも頷いてみせた。
「問題なのは、軍用だとちょっとカロリーが高いことかしら」
「でも、残すのも申し訳ないんだよね」
 こんな会話を交わしながらも、二人は蓋をあげる。
「いつもなら、カナード兄さんに食べて貰うんだけどね」
 時々、大尉にも強奪されるのはどうしてなのかな? とキラは付け加えた。
「……それ、本当?」
「うん。でも、僕、お肉苦手だから」
 食べて貰えるとありがたいんだよね、とフレイへと視線を向ける。それを彼も知っているからかすめていくのだろうが、と言うこともわかっていた。
「だから細いのよ、キラ」
 そのウエストはうらやましいけど……とフレイが言い返してくる。
「……でも、僕、胸がないから」
 やっぱり、男の人は大きい方がいいのかな……とため息を吐いた。
「そのようなことはないと思いますわ。少なくとも、わたくしが知っているイザーク様はそうでしたもの」
 もっとも、彼の場合、キラ以外の女性に興味がなかったと思える……とラクスは口にする。
「それって、たんに嫌な女性を近づけないための口実に使っていない?」
 即座にフレイが口を挟んできた。
「それはないと思いますわ。わたくしのお知り合いに装飾品を扱っておいでの方がおられますが、イザーク様は毎年、新しい指輪を注文されるそうですわ」
 キラの瞳にそっくりの色の宝石を着けた指輪だそうだ、とラクスは口にする。
「……それって……」
「何か、純情なのか恥ずかしいのかわからない奴ね」
 友人達の言葉に、キラは何と言い返せばいいのかわからなくなってしまう。
「……僕のサイズ、知っているはずがないのに……」
 なんでそんなことをするのだろうか、とキラは呟く。
「きっと、再会できたときにサイズを直されるおつもりなのですわ」
 それに、毎年キラに似合うと思うデザインを考えているのかもしれない。だから、どんどん新しいものを発注しているのかもしれない、とラクスは微笑む。
「何と言えばいいのか……うまく言葉が見つからないけど……まぁ、それに関しては認めて上げてもいいかもしれないわね」
 少なくともキラのことを忘れていない、と言うことだろうから……とフレイは呟く。
「でも、問題は今のキラを見てからの反応だわ」
 少しでもキラを傷つけたら許さないんだから、と口にしながら、フレイはメインディッシュの肉にフォークを尽くさす。
「本当に、キラ様はみなさまに好かれていらっしゃいますのね」
「……そうなのかな……」
 ラクスの言葉に、キラは首をかしげるしかできなかった。