素肌から直接伝わってくるぬくもりが一番心地よい、と思う。特に、行為の後の時間は、だ。
「……今日、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンを見かけた……」
そっとキラの髪をなでながら、レイはこう口にする。
二人の名前を聞いた瞬間、キラは身をこわばらせた。
「キラが幸せなら、それでいいのだそうだ。たとえ、あったとしても黙っていてくれる、と言うような話をしていたしな」
もっとも、自分から告げるような趣味はないが……と小さく笑った。
「レイ……」
それでも不安を隠せないのか――それとも、レイの言葉をどう判断していいのかわからないのか――キラが体をすり寄せてくる。
「それに、彼等はザフトの軍人だ……いざとなれば、ギルに命令でもしてもらうさ」
この言葉に、キラがレイの顔を見上げてきた。
「冗談だ。そんなことをしなくても、キラがきちんと説明すればいいだけだろう?」
自分と一緒にいたいから、着いてきたのだ、と。
他の者達に言えば、きっと反対されるとわかっていたから、黙っていたのだ、とも付け加えれば、彼等なら納得してくれるのではないか。レイはこう言いながらそっとキラの頬にキスを落とす。
「……レイ」
その瞬間、キラの顔が真っ赤に染まる。
「違うのか?」
少なくとも今は……と付け加えれば、キラは困ったように視線を落とした。
「……違わない……」
そして、ためらいながらも素直にこう口にする。
「なら、いいだろう」
レイはキラの背中に回した腕にまた力をこめた。そして、そのまま体勢を変える。
「レイ?」
何を、とキラは目を丸くした。
「もう一度、付き合ってくれるだろう?」
欲しくなった……と耳元で囁いてやれば、キラはさらに頬を赤く染める。
「いいな?」
それでも、さらに言葉を重ねれば小さく頷いて見せた。
その事実に満足を感じながらも、レイはそっと唇を寄せていく。そのまま、彼のそれへと重ねていった。
ラクスへ
心配かけてごめん。
取りあえず、今は落ち着いています。
居場所は教えられないけど、それでも、側にいてくれる人がいてくれるから、大丈夫。
みんなに笑って会えるようになれたら、また連絡をします。
キラ
P.S
取りあえず、今は幸せ、だと思う。
小さなため息をつくと、キラはパソコンの電源を落とす。
「誰に、メールを送ったんだ?」
次の瞬間、レイの腕が背後からキラの体を抱きしめてくる。
「……ラクス、に……取りあえず、元気だとだけ伝えておいた」
こちらのメールアドレスも何も記していない以上、彼女には自分の居場所がわからないだろう。それでも、ラクスなら大丈夫だ、とキラは思うのだ。
「彼女であれば、きっと……アスラン達にうまく伝えてくれると思うから」
いずれは実際にあわなければいけないだろうけど……とキラは付け加える。
「キラ……」
「その時は……一緒に行ってくれる?」
一人で行く勇気は、今でもない。いや、これからだって出ないかもしれない。
だが、彼が一緒に行ってくれるのであれば大丈夫だとキラは思う。
「俺が、キラを一人で行かせるわけがないだろう?」
そうすれば、レイはキラの体に回した腕に力をこめながらこういった。
「信じていないわけじゃないがな。ただ、プラント以外であれば、ギルもフォローができない」
それでキラを失うようなことになれば、いくら後悔を重ねても足りないに決まっている、と彼は続ける。
「以前は……ギルとラウの手助けをしたくて、力が欲しかった……でも、今はその力をキラを守るために使える」
だから、一緒に行くのは当然だ……と彼はきまじめそうな口調で告げた。
「……レイ……」
だが、それでは自分が彼を振り回しているだけではないか。キラはそう考えたのだ。
「というのは、あくまでも建前で……俺が、貴方と離れたくないだけかもしれないが……」
ようやく素直になってくれたのに……とレイは囁いてくる。
「……レイ……僕が、ここにいるって……そう決めたのに?」
何が不安なのか、とキラはレイを見上げた。
「不安というわけではない。ただ、今は少しでも長く一緒にいたいだけ、だ」
せっかく、重いが通い合ったのなら……とレイは微笑み返してくる。
「キラは、違うのか?」
「……違わない……」
キラの言葉に、レイはさらに笑みを深めた。そのままそっと身をかがめてくる。近づいてくる彼の唇に、キラはそっと瞳を閉じた。
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