最近、やたらと小競り合いがあるような気がするのは錯覚だろうか。
「……地球軍じゃないっていうのが、厄介なんだよな」
 報告書を書きながら、ディアッカはこう呟く。
 ブルーコスモスや地球軍なら、さっさと撃破してしまえばいい。だが、相手にジャンク屋が含まれているのであればそういうわけにはいかないのではないか。
「あいつらも仕事だしな」
 それに、こうゴミが多くちゃうかつに新人を偵察にも出せない、と呟く。
 もっとも、その程度ぐらいはかわしてもらわなければいけないのだが。少なくとも、MSのパイロットをやると言うのであれば、である。
 今は小規模な小競り合い程度だが、このままこのぬるま湯のような世界が続くとは思えないのだ。
 自分たちが望んでも、相手が許してくれない、と言った方が正しいのか。
 だからこそ、さっさと《彼》を見つけ出したい、とディアッカは思う。
「しっかし、ジャンク屋の中にもあいつはいなかったな」
 小競り合いの仲裁で知り合いになった人間に調べてもらったのだが、キラの特長に会う人間はギルドに登録されていなかったらしいのだ。もちろん、最低でも外見は変えているだろうし、その気になればいくらでもデーターの改変位はできる相手だとはわかっている。  だが、ディアッカはあそこにキラはいない、と思った。
 何というか、確証があるわけではなくあくまで彼のカンでしかないのだが。
「だからといって、あいつの性格だとテロリスト集団と一緒にいるって可能性はないし……」
 こうなると、やっぱりプラント関係かね……と小さなため息を漏らす。
 カガリ達ががんばっているとはいえ、オーブもコーディネイターには暮らしにくい場所になりつつあるらしい。それが《アスハ》や《サハク》ではない首長家の狙いらしいが。
「……あの時に地球軍に占領されていたっていうのがまずかったんだろうな」
 それに関しては、自分がどうこう言える立場ではないとわかっている。
「あいつらが何とかするか、きっと」
 ともかく、自分にできることを何とかしないとな……と意識を切り替えた。
「……これでよしっと……後はイザークの所に持っていって、それでOKをもらえばいいと」
 それで、今日は眠れるはずだ、と口にしながら腰を上げる。
 だが、タイミングを見計らったかのように警報が鳴り響く。
「……マジ?」
 何で、とディアッカはため息をついた。だからといって、警報が消えるわけではない。
「ともかく、あいつがキレる前にブリッジにいかないとな」
 そして、状況を判断しなければいけないだろう。こう呟いて、ディアッカは通路に飛び出していった。

「……やっぱり《メンデル》だろうな。鍵は」
 アスランはこう呟く。
 自分がキラの手元にそれがあると気づいたのが、メンデルでの一件の後だ。それ以前に彼が持っていたところは見ていない。
 そして、カガリの分はしっかりと彼女の手元にあったのだ。
「あの写真をキラが入手できたとするなら、あそこしかない」
 もちろん、それ以前のどこか、とも一応は考えてみた。
 だとするならこのオーブで、しかもキラの《両親》であるハルマとカリダからと言うことになるはず。
 だが、ヘリオポリスで別れてから彼等がキラと再会できたのは戦後だ、と聞いている。そして、キラがあれを持っていたことに彼女たちが驚いていた光景もこの目で見てた。
「全部、俺のせい……なんだがな」
 ヘリオポリスでキラを保護できていたら、と今でも考えないわけではない。だが、そうしていたら、今の平和は決して彼等のものにならなかっただろう。そう考えれば、あの時の再会も、その後のことも、仕方がなかったことなのだとは言えるのかもしれない。
 それに、キラもそう言ってくれたのだ。
 ただ、それでも自分で自分が許せない。
 そして、キラが悩んでいたことを知っていながらも何もできなかった、と言うこともだ。
 もちろん、キラを捜しているのはその贖罪のためではない。
 アスラン自身が、キラの存在をそばに感じていないとダメなのだ。
 自分でも、自分がここまで《キラ》に依存していたとは思ってもいなかった。しかし、彼がいなくなって、改めてそれを認識させられたのだ。
「キラに……もっと早く俺の気持ちを伝えられていたら……」
 あるいは、彼は姿を消さなかったかもしれない。
 だが、まだ遅くはないのではないか。
 キラさえ取り戻せればきっと……そう信じたいアスランだった。