どうして、彼等は自分をこの世界に引き留めようとするのだろうか。
「僕を、憎んでいたんじゃないの、かな」
 彼を殺してしまったから、とキラは呟く。
 それとも、こんな自分でも彼等にとって見れば利用価値がまだあるのだろうか。
「……カガリ達に迷惑だけはかけられないよね」
 自分の存在で彼等の立場が危うくなるのなら、とキラは拳を握りしめる。覚悟を決めなければいけない、と心の中で付け加えた。
 だが、今は実行に移すときではない。それもわかっている。
 今は、レイのことを優先すべきなのだ。
 彼にしても、自由に動けるようになれば自分以外の誰かを選ぶかもしれないし、とキラは思う。
 その時に、彼が自分のことで苦しまなければいいのに。そうも考える。
「僕は……」
 結局、周囲の人々に辛い思いしか抱かせられないのではないだろうか。。
「やっぱり、あそこから出るべきじゃなかったのかな」
 あそこに眠っている兄弟達のように、カプセルの中で生を終え、溶液の中に浮かんでいるべきではなかったのか。そんな考えも脳裏から離れないのだ。
「それでは困るな」
 不意にレイの声が降ってくる。
 いったいいつの間に、と思いながらキラは慌てて振り向こうとをした。しかし、それよりも早くレイの腕が背後からキラを抱きしめてくる。
「レイ君……」
「俺は、こうして抱きしめられる《キラ》が必要なんだ」
 ぬくもりを感じられる、とレイはさらに腕に力をこめた。
「それに、キラは俺のものだって、言っただろう?」
 勝手にどうこうしようなんて思うな、と彼は言ってくる。
「……だけど……」
「キラを憎むのか、それとも必要とするのか……決める権利は俺にある。違うのか?」
 そして、キラの命をどうするかも、決めるのは自分だ……とレイは付け加えた。
「……でも、僕の存在は……」
 世界を混乱に陥れるものでしかない、とキラは口にする。そんな自分がここにいてよいはずがない、とも。
「そんなこと、俺がさせない」
 そのために自分は健康な体を手に入れるのだから、とレイはさらに言葉を重ねてきた。
「だから、貴方も逃げるな」
 逃げ出したいときは、自分にすがってくればいいから……と。
「そんなこと……」
 許されるはずがないだろう、とキラは目を丸くする。
「俺がかまわないと言っているんです!」
 それとも、自分の言葉が信用できないのか、と彼はさらに問いかけてきた。
「そんなことはないけど……」
「なら、余計なことは考えるな」
 言葉とともに、レイはキラの服の下に手を滑り込ませてくる。
「レイ君?」
 何を、と言わなくても彼がしようとしていることはわかった。
 だが、どうして今なのかがわからない。
「体でも覚えてもらおうと思うだけだ」
 自分の言葉を……と付け加えながら、レイの指がキラの弱みを刺激し始める。その指先がとても熱い、と思う。
「ダメ……」
 しかし、このまま流されてはいけない。
 そう囁いてくる声がキラの内にはあった。
「……何故です?」
 今まで拒んだことはないだろう、とレイは囁く。同時に、キラの肌の上を滑る彼の指の動きが乱暴になった。
 そのまま胸の飾りを捕らえる。
 押しつぶすように刺激をされると、キラの体は快感で跳ね上がってしまう。
 それでも、このままではいけない。
「明日……」
 検査があるだろう、とキラは何とか口にした。
 行為の痕を人目に触れさせる趣味はないのだ。何よりも、自分の体力では少なくとも明日の午前中は動けなくなるだろう、とキラにはわかっている。
「痕は付けません」
 くすり、とレイは笑う。
「貴方の体力については、できる限り考慮しますよ」
 だから、あきらめろ……と言いながら、胸への刺激を強める。
「んっ……んんっ……」
 そこからわき上がってくる感覚を、キラは必死にこらえていた。だが、それもいつまで持つかわからない、と思う。
 自分の体が、彼の与えてくれる快感に弱い、と言うことは自分自身が一番よくわかっているのだ。
「声を殺さないで……聞かせて」
 そして、レイもキラの声を聞くのが好きらしい。言葉とともに、今度は胸の飾りをつまみ上げるように刺激をしてくる。
「ひぁぁぁぁぁっ!」
 我慢できずに声が出てしまう。
 一度飛び出してしまえば後は抑えようがない。
 キラは、意識を失うまで声を上げ続けた。