「……流石に、そこまでするとは思いませんでした」 キラの話を聞いたレイはあきれたように口にする。 「性転換って、出来たっけ?」 でないと、入学は無理だよね……とキラが苦笑混じりに問いかけてきた。 「そんなこと、ザラ閣下がお許しになるはずがないのに」 だが、とレイは心の中で呟く。 アスランはきっと、学校に特例を認めさせるつもりだったのだろう。 パトリックや学校側へはラクスの存在を口実に使ったのではないか。だとするなら、都合のいいときにだけ、と思わずにはいられない。 「まぁ、流石に却下されたようだけどね」 逆に、ディセンベルに連れ戻される原因にもなったようだ。 「本当。空気が読めない人ですね、あの人も」 というよりも、自分ルールで動いているといった方が正しいのか。どちらにしても、あきれるしかない。 「でも、これでアスランともしばらく会えなくなるし……そう考えると、少しは寂しいのかも」 「だって、それが普通のことでしょう?」 このまま、キラが変な感傷を抱いてはまずい。そう思って、レイは慌てて口を開く。 「あの人があちらの学校に行く方が、あの人のためです。第一、自分一人のためにルールを変えさせようと言う方がおかしくはないですか?」 女子校だからこそ、あの学校に入学したという人も少なくないのではないか。レイはそう問いかける。 「まぁ、そうだよね」 確かに、とキラもそれに関しては頷いてくれた。 「だから、アスランも女の子になりたかったのかな、って思っただけ」 しかし、こういう反応が返ってくるとは思わなかった。 「姉さん?」 いったい何故そう考えたのだろう。 「だって、カガリがメールで『男に生まれたかった』と騒いでいたから」 最近、特に酷いのだ。そう彼女は続ける。 「ユウナ・ロマと何かあったのかな?」 カナードなら、何かを知っているだろうか。キラはそう言ってまた首をかしげる。 「カナード兄さんなら、きっと知っているでしょうね」 後でメールを書くときに、ついでに聞いておきます。そう言ってレイは微笑む。 「ついでに、あちらでのあの人の様子を監視してくれる人がいればいいのですが」 そのあたりは、ラウかギルバートに相談しておこう。レイは心の中で呟いた。 「本当……もうじき、入学式なのにね」 寮に入るルナマリアは色々と大変らしいのに、とキラはため息をつく。だが。アスランは、あちらにも家があるからいいのだろうか……と直ぐに気が付いたようだ。 「かもしれませんね」 まぁ、彼の場合、自分で準備をしなくてもいいだろうし……とイヤミ混じりにレイは口にした。 「そうなのかな」 「そうですよ。多分、姉さんが寮にはいるとしても、きっと、誰かが先にやって老いてくれます」 アスランならなおさらではないか。レイはそう言って笑った。 「確かに」 自分がやるよりも、その方が早いよね……とキラはとりあえず納得したらしい。 「お茶、飲む?」 ほっとしたら喉が渇いたのか。こう問いかけてきた。 「俺が淹れましょうか?」 「ううん、自分でやるよ」 自分で言い出したのだから、とキラは微笑む。 「なら、お願いします」 レイの言葉に、キラは頷くとそのまま部屋を出て行った。それを確認して、表情を変える。 「オーブで、何か起きているのか?」 それがプラント――というよりキラまで波及しなければいいのだが……と眉根を寄せながら呟く。 「カナード兄さんにはもちろん確認するとして……ラウ達にも話をしておいた方がいいでしょうね」 彼等であれば、自分たちのルートで確認をしてくれるだろう。 「しかし、本当に最後までたたりますね、あのバカは」 やっぱり、殺しておくべきだったか。レイはそんなことも呟いていた。 |