数日後、アプリリウスワンで大きな摘発があったらしい。それは、隠居地と言われるユニウスセブンにまで及んだとか。
 だが、詳しい内容は、まだ成人していないキラには教えられない。
「でも、兄さんとギルさんが関わっていたことだけは事実なんだよね」
 そして、あの二人が共同で何かをしたのであれば、その理由の一つに自分の存在があった可能性は否定できないはず。
「でも、何も教えてくれない……」
 自分がまだ子供だから、だろうか。
 しかし、レイはあれこれ教えて貰っているらしい。
 だとするならば『子供だから』という理由だからではないということになる。
「じゃ、何なんだろう」
 自分にだけ教えて貰えない理由というのは。首をかしげながら考える。しかし、いくら考えても答えが出てこない。
 こう言うときには、自分だけで考えていてはいけない。
 自分一人だと、とんでもない結論に達してしまう。
 それはわかっているのだが、とキラが小さなため息をついたときだ。
「何、黄昏れているのよ!」
 言葉とともに、いきなり背後から肩を叩かれた。
「ルナ?」
 その声だけで、誰なのかわかる。でも、何故彼女がここにいるのだろうか。そう思いながらキラは視線を向けた。
「私もいます」
 そうすれば、その隣にメイリンの姿も確認できる。
「二人で買い物?」
 ならば納得。そう思いながら問いかけた。
「まぁ、ね」
「お姉ちゃんの寮での必需品を買いに来たんです」
 現在は、まだザフトの入隊基準に達していない。それでも、少しでも近くで勉強をしたいから、ということで、ルナマリアはアカデミー傍のカレッジへ入学を決めたのだ。
「そうなんだ。でも……少し寂しくなるね」
 ラクスも、卒業と同時に忙しくなったし……とキラは呟くように口にする。
「……ラクス様の歌を楽しみにしている人たちは多いから仕方がないんだろうけど……まずいわね」
 ということは普段からキラの側にいられる人間がいないと言うことだわ、とルナマリアが慌てたように言った。
「ルナ?」
 どういう意味? とキラは言外に問いかける。
「大丈夫よ、お姉ちゃん。きっと、ラクス様がきちんと手を打ってくれるって」
 今更入学先を変更するわけにはいかないんだし、とメイリンが冷静に告げた。
「……そうなんだけど……心配なんだから、仕方がないじゃない」
 こんなに可愛いのよ! といいながら、ルナマリアはキラに抱きついてくる。
「変な虫が付いたら大変じゃない!」
 そのままこう言われても、どう反応すればいいのか。
「嬉しいけど、嬉しくない」
 思わずこう呟いてしまう。
「だって、本当にキラは可愛いんだから」
 婚約者がいようと、諦めていないバカもいるし……とそうも付け加える。
「とりあえず、毎日メールするからね」
 ちゃんと返事をするのよ! とルナマリアはキラを抱きしめる腕に力をこめた。
「もちろんだよ、ルナ」
 だから、ルナもちゃんと日常をかいておくってね……と言い返す。
「ところで、キラさんはどうしてここに?」
 ずっといたようですけど、とメイリンが問いかけてくる。
「待ち合わせ。ラクスと」
 一緒にお茶しようという約束をしたのだが、彼女の仕事の関係で待ち合わせがここになったのだ。キラはそう説明をする。
「一緒に行く?」
 二人なら、ラクスも文句は言わないと思うけど……と二人に問いかけた。
「行く!」
 行くから!! とルナマリアは叫ぶ。それに、キラは反射的に耳を押さえた。






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