「いいか、キラ。何かあったら、直ぐに連絡を寄越せ」
 本当は帰りたくないのだが……とカナードは付け加える。
「わかっているよ、カナード兄さん」
 キラはそう言って微笑んだ。
「第一、僕がしなくてもレイが連絡するんじゃないかな?」
 毎日、と彼女はそのまま付け加える。
「まぁ、その位は……」
「当然のことです。でなければ、カナード兄さんが何をするかわからないじゃないですか」
 情報があれば適切な判断を下してくれるに決まっているだろうし。そうも彼は言い切った。
「……レイ、お前は、俺を何だと思っているんだ?」
 その言葉の何かに引っかかりを覚えたのだろう。カナードがこう聞き返す。
「重度のシスコンでしょう? 俺も兄さん達も」
 だから、自分がやるであろう行動を口にしただけだ。レイはそう言い返す。
「それとも、間違っていましたか?」
 さらに付け加えられて、カナードは深いため息をつく。
「間違ってないな」
 同じような行動を取っただろう、と彼は頷き返す。
「ということはお前は自分が重度のシスコンだと自覚している、ということか」
 自覚しているのかいないのかわからないラウという存在よりはましだが……とカナードはため息をつく。
「なら、どうしてあれをキラに近づけた!」
「……あれというのは、誰のことでしょう?」
 該当人物が多すぎて、カナードが誰のことを言いたいのかがわからない。そのレイの言葉を、キラは直ぐに理解できなかった。
「確かに、多いか」
 しかも、現状でもまだあれこれ諦めていないらしいし……とカナードはため息をつく。
「ともかく、だ」
 だが、すぐに我に返ったかのように顔を上げる。
「キラがその気になってしまった以上、あれとの婚約は認めてやる! だが、俺は絶対に、あいつに『義兄さん』などと呼ばれたくないからな!」
 あいつはラウよりも年上なんだぞ! と彼は叫ぶ。
「……でも、バカよりはましですよね」
 あれを義兄とは絶対呼びたくない! とレイが妙に力みながら口にした。
「そんなことになっていろ。キラが何と言おうと、全力で排除していた」
 今ですら、その存在を許容できないのに……とカナードも頷いている。
「カナード兄さん……それに、レイも。いくらなんでも、今のあの人が僕に手出しできるはずないでしょ」
 プラントに足を踏み入れられないんだし、とキラは首をかしげた。
「何を言っているんですか!」
 彼女の言葉をレイは即座に却下する。
「あれは家庭内害虫よりもたちが悪いんです! どこからわいてくるかわからないんですよ!」
 やっぱり、どこかできっちりと命を取っておくべきだった……と彼は続けた。
「レイ!」
「……そこまでにしておけ、レイ」
 珍しいと言っていいのだろうか。キラよりも先にカナードがレイを制止する。
「何故ですか、カナード兄さん!」
 それが面白くなかったのだろう。レイが彼にくってかかった。
「それは、オーブにいる俺たちの楽しみだ」
 だから、レイ達は別のことを楽しめ……と彼は続ける。
「あぁ、そうですね。ロンド・ミナ様とロンド・ギナ様の楽しみをとってはいけませんでした」
 彼等なら、ものすごくえぐい報復をしてくれそうだ……とレイは微笑む。
「だろう?」
 だから、任せておけ……とカナードも笑う。
「……二人とも……」
 いいのか、それで……とキラは思わずため息をついてしまった。






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