目の前の光景に、キラは驚きを隠せないようだ。
「どうやら、ばれなかったようだね」
 よかった、と口にするギルバートの背後でアスラン達が床に座り込んでいる。しかし、彼とラクスにルナマリア。そして、ラウ達が壁になっているせいで、その姿はキラからは見えないはずだ。
「当たり前だろう」
 そんなミスをするか、とカナードが言い返してくる。
「兄さん、知ってたの?」
 キラがそう言いながら、彼を見上げた。
「もちろんだ」
 内緒にしていたのは心苦しかったが、キラのそんな表情が見られたから、その甲斐があった。そう言って、彼は笑う。
「どうして内緒にしていたの?」
 教えてくれれば、自分だってあれこれ協力したのに……と彼女は頬をふくらませた。
「今日の主役は君だろう?」
 流石にこのままではまずい。そう判断したのだろう。ラウが口を開く。
「お祝いされる人間が参加しては意味がないのではないかな?」
 さらにこう付け加える。
「ラクス様達にも今日の日時しかお教えしていないしね」
 お祝いされる側だから、と彼は微笑んだ。
「みなも、だから内緒にしていてくれたのだ。驚かせて喜ばせたい。そう思ってのことだから怒るものではないよ」
 ここまで言われては、キラとしても怒りを抑えないわけにはいかないのだろう。
「……わかりました」
 仲間はずれにされたのは面白くないけど、と彼女はそれでも主張する。
「それは我慢しなければいけませんわ、キラ」
 くすくすと笑いながらラクスが口を挟んできた。
「ラクス! 来てたの?」
 途端にキラは嬉しそうな表情を作る。
「家にいるよりも純粋にお祝いをして頂けそうでしたから」
 シーゲルへの義理でお祝いを言われても嬉しくない。そう言ってラクスは笑う。
「あたしもいるわよ」
 一瞬、暗くなりかけた空気をルナマリアの声が払拭した。
「でも、ホームパーティって聞いたのよ?」
 こんなに大がかりなものだとは思わなかった、と彼女は続ける。
「だって、お姉ちゃん。キラさんの所だよ?」
 ギルバートとラウがいるのに、家でやるのと比べられるはずがないじゃない。そう言ってきたのはメイリンだ。
「そうかもしれないけど……」
 でも、やっぱりびっくりするじゃない……とルナマリアは言い返している。その微笑ましい様子に、誰もが微笑みをうか寝ていた。
「……と言うことは、アスランも来ているの?」
 ラクスとルナマリアがいて彼がいないはずがない。そう断言するキラに、思わず苦笑を浮かべてしまう。
「もちろん、来ていますわ」
 イザークやディアッカも一緒に、とラクスが口にする。
「どこに?」
 来ているのに、どうして姿が見えないのだろうか。そう言って、キラは首をかしげる。
「自爆したのですわ」
「自爆?」
「えぇ。キラが帰ってきた瞬間、皆様を出し抜こうとして絨毯に足を引っかけましたの」
 そのまま、盛大に転んだから、未だに動けないらしい。
「ですから、あえて見ない振りをして差し上げるのも優しさですわよ」
 コロコロと笑いながらラクスはそう言った。
「そうですよ、姉さん」
「確かに。自業自得なんですから」
 それにレイとニコルが加わる。
「格好悪い所なんて見られたくないですしね」
 それよりも、何か引いて欲しい曲はないか。今日はキラ達のリクエストを中心に弾くから、とニコルは笑う。
「そうですね。俺も姉さんの好きな曲を贈りますよ」
 レイも即座にこう告げる。
「それなら……何がいいかな?」
 キラの意識はそれであっさりと三人から離れたらしい。
 その事実に上半身をおこしかけていた彼等がまた絨毯に懐いたのは、見なかったことにしてやろう。そうギルバートは心の中で付け加えた。






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