三人が復活をしたのは、それから五分ぐらいしてのことだった。
「……まったく、それほど俺がキラと親しくするのを邪魔したいんですか!」
 あなたは、とアスランがギルバートにくってかかってくる。
「邪魔をしたつもりはないよ?」
 実際、直接的な行動を取ったことはないが? とギルバートは言い返す。
「今回のことは、あの勢いでキラに迫られてはケガをしかねない。そう判断してのことだよ」
 違うのかね? と逆に聞き返した。
「……それ、は……」
 流石に、今日のキラの服装ではあり得ない話ではない。そう思ったのだろう。アスランは言葉も詰まっている。
「それに、今日邪魔をさせて頂いたのはわたくしですわ」
 くすくすと笑いながら、ラクスが口を挟んできた。
「そうなの?」
 キラが驚いたようにラクスへと視線を向ける。
「えぇ。その位、可愛いものですわ」
 せっかくのお祝いを台無しにされるより、とラクスは笑いを漏らす。
「でも、わたくしがしたのは、彼は通るかもしれない場所にオットマン足置き台を移動させただけですのよ?」
 あんなに大きなものの存在に気が付かなかったのは、自分のミスではないか。彼女はそうも付け加える。
「……普通、気が付きますよね」
 あきれたようにニコルが口にした。
「そう思うんだけど……でも、お姉ちゃんも時々前にあるものが見えなくなるから」
「一言よけいよ、メイリン!」
 まったく、といいながらもルナマリアは否定しない。もっとも、彼女であれば、多少のものは蹴飛ばして終わるのだろうが。
「……それは、アスランの方が悪いよね」
 ちゃんとみんなが気付いているのだから、とキラは口にする。
「それよりも、どうしてアスランはギルさんにそんなに文句ばかり言うの?」
 別に言わなくていいこともたくさん言っているよね、とキラは彼に問いかけた。
「……キラ!」
 まさか、彼女が気付いているとは思わなかった。それがアスランだけではなくギルバートの本音だ。
「アスランだけじゃなくて、イザークさん達も時々そうしているよね? 僕が傍にいないときに、どうして?」
 わざと? と彼女はさらに追及の言葉を口にする。
「だって、おかしいだろう?」
 しかし、開き直ったのか。アスランは言葉を綴り始めた。
「この人はキラより一回り以上も上なんだよ?」
 それなのに、キラのことが好きだなんて……とそう付け加える。
「それの何がおかしいの?」
 訳がわからない。キラはそう言いながらアスランを見つめた。
「誰かが誰かを好きになることなんて、理屈じゃないんだよ?」
 年齢とか何か、関係ないのではないか。それにキラは言い返す。
「それでも、どうしようもないことがあるって言うことも知っているよ? アスランとラクスの関係は、そうじゃないの?」
 そうならば、きちんと責任を取らなければいけないのではないか。
「イザークさんやディアッカさん、それにニコル君だって、そうじゃないの?」
 今、色々な権利を手にしている以上、それに見合うだけの義務を負わなければいけないのではないか。
 キラの言葉は彼等にとってきついものであるようだ。しかし、ラクスにしてみれば当然のことらしい。
「そうですわね。義務と権利は表裏一体です」
「でしょ?」
 ラクスが同じ意見を持っていてくれて嬉しい、とキラは微笑む。
「義務と権利をはき違えている人は、大嫌い!」
 そう言った彼女のの脳裏に浮かんでいるのが誰の顔なのか。確認しなくてもわかってしまう。
「だから……もし、兄さん達以外と結婚するなら……ギルさんを選ぶな、僕は」
 さらにこうキラは言い切る。
 次の瞬間、声にならない叫びがあちらこちらであがったことのは、あえて無視しよう。
「それは嬉しいね」
 何なら婚約するかい? とギルバートは軽い口調で問いかける。
「……それは今でなくてもいいだろう」
 憮然とした表情でラウがこう言ってきた。

 もっとも、諸事情を鑑みて、そうするしかないだろうという結論に達したことも事実だった。






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