少女達はそれぞれ着飾っていた。しかし、キラが一番可愛いと思うのは、ひいき目なのだろうか。
 いや、そうではないはず。実際、周囲からの視線は彼女へ集まっていたのだ。しかし、それを彼女が喜んでいるかと言えば、答えは『否』だ。
「キラ! こっちよ」
 不安そうにギルバートの影に隠れるようにしていた彼女の耳に、明るい声が届く。
「ルナ!」
 友人の呼びかけに、キラはほっとしたような表情を作る。そのまま、確認するようにギルバートを見上げてきた。それに頷き返すと、進行方向をそちらへ変える。
「キラ、凄く似合っているわ、そのドレス」
 そう言っている彼女のドレスは、華やかなものだ。しかし、それがよく似合っている。
「ルナもよく似合ってるよ」
 やっぱり、ラクスの見立ては確かだ……とキラは微笑む。
「そうよね。私なら、これを選ばなかったかもしれないもの」
 こんな大人っぽいデザイン、と彼女は続けた。
「でも、ルナは大人っぽいから」
 自分と違って……と付け加えるキラに、ルナマリアは苦笑を浮かべる。
「いいのよ、キラは。可愛いから」
「……可愛いって……」
 僕だって、とキラは頬をふくらませた。
「だって、可愛いんだもの。デュランダル様だって、そう思われますわよね?」
 こう言いながら、ルナマリアはデュランダルに同意を求めてくる。
「確かに、キラは可愛いという表現が一番しっくり来るね」
 それは悪いことでないだろう? とキラに微笑みかけた。
「……でも、やっぱり、大人っぽいのほうがいいような気がします」
 だが、キラにはキラなりの主張があるようだ。それを聞いて上げようと思ったのだが、そうはいかないらしい。
「キラ!」
「ずいぶんとまたかわいらしいドレスだな。よく似合っているが」
「そうそう。凄く可愛い」
 空気を読んでいるのかどうかわからない三人組が押しかけてきたのだ。ここにもう一人いないのは、間違いなく、レイと同じ理由だろう。
「アスラン……それにイザークさんとディアッカさん……」
 困惑を隠しきれないという表情でキラが彼等の名前を口にする。
「アスランはわかるけど……どうしてお二人まで、ここに?」
 その理由をルナマリアが教えてくれた。
「キラの卒業式だし、これからなかなか会えなくなりそうだから、な」
 そう言ってきたのはディアッカだ。
「来なくていいものを」
 ぼそっとルナマリアが呟く。
「これで、フリーの女性陣が騒ぎ出すわよ」
 パーティで踊りたいと言って……と彼女はため息をつく。
「でも、アスランはラクスと踊るんだよね?」
 当然、とキラは言い返している。
「僕には、ギルさんがいるし……他にも、兄さん達が来たら踊る約束をしているから……他の人とは踊れないかも」
「あたしも、一応パートナーいるし」
 だから、安心よね……とルナマリアも笑う。
「というわけで、ラクスの所に行こうか」
 綺麗に三人を無視してキラはこういった。
「そうしましょう。あそこなら、余計な野次馬は来ないし」
 色々と話もしたいし、と頷いている。
「ギルさんも、それでいいですか?」
 そして、こう問いかけてきた。
「君達がそれでいいなら、私は構わないよ」
 キラとルナマリアの意見の方が優先だ。そう言って微笑んで見せた。
「キラ!」
 予想外の反応だったのだろうか。アスランが焦ったように彼女の名を叫ぶ。
「何?」
 どうかした、とキラは首をかしげて見せた。
「だから、今日のパーティで、俺たちと……」
「踊れないって、言ってたでしょ?」
 もちろん、その予定を変えるつもりはない……ときっぱりと言い切る。
「僕のパートナーはギルさんだし……カナード兄さんは、わざわざオーブから来てくれたもん。無視できないよ」
 そうなれば、ラウを仲間はずれには出来ない。
「だから、みんなとは踊らない」
 再度重ねられた言葉に、三人は絶望的な表情を浮かべる。
「では、ラクス様にご挨拶に行こうか」
 ギルバートは会えて空気を読まずに二人を促す言葉を口にした。






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最遊釈厄伝