「あら。キラとおそろいのデザインでお洋服を着て頂きたくなりますわね」 ラクスの言葉に、レイが頬を引きつらせている。 「ご心配なく。きちんと男性用のデザインにさせて頂きますわ」 コロコロと彼女は笑いを漏らす。その様子に、カナードですら苦笑を浮かべるしかできないようだ。 その時だ。 「外でバカが集合しているよ」 ちょっと遊びに来た。そのような態度で姿を現したのは、バルトフェルドだ。 「ということは、うまく騙されてくれたということかな」 それとも、それもまたフェイクなのだろうか。 政治上の駆け引きならば得意だが、実戦――というのは大げさか――となると話は別だ。同時に、まだまだ自分は未熟なのだと思い知らされる。 「ラウに、確認してみますか?」 レイがこう問いかけてきた。 「彼なら、姉さんにばれないように確認してくれると思いますが」 自宅の周囲に不審者がいるかどうかなら直ぐにわかるだろう。そう彼は続ける。 「そうだね」 だが、それならば執事でもいいかもしれない。 「とりあえず、メールをしておこう」 二人にそれぞれ送っておけば確実だろう。そう判断をして、端末を取り出す。 「なら、作戦開始は、メールが返ってきてから……でいいのかな?」 「それが確実だろうね」 いざというときには状況によってあれこれ調整しなければいけないだろう。できれば、その可能性はない方がいいのだが。そう心の中で呟きながら、ギルバートは手早くメールを作成し、送信する。 「……それにしても、どうして《キラ》なのでしょうか」 不意にラクスが問いかけの言葉を口にした。 「キラの才能が欲しいのだ、としても……それなら、レイ君でもよろしいのではありませんか?」 言葉は悪いかもしれないが、と彼女は続ける。 「だが、女なのはキラだけだ」 それに、カナードが言い返す。 「才能が遺伝するとは限りませんのに」 それだけで何かを察したのだろう。ラクスがあきれたようにこういった。 「キラの才能は、キラだけのものです」 確かに、天賦の才はあったのかもしれない。だが、それ以上に彼女は努力をして来た。それがわからないのだろうか、と彼女は首をかしげる。 「何よりも、女性は子供を産むためだけに存在しているわけではありません」 そのようなことを考えているバカは、徹底的にたたきのめさなくてはいけないだろう。ラクスはそうも口にした。 「……ともかく、今は、目の前にいるバカを処分しないといけませんけど」 何かいいおしおき方法はないだろうか、と彼女はバルトフェルドに視線を向ける。 「……どのみち、アプリリウスワンからは退去でしょうから……そうですね。カプセル一つで護送船に移動してもらうのはどうでしょうか」 宇宙葬用のもののサンプルが何種類か納品されていたはず。その使い心地を確認してもらうのはどうだろうか。そう言って彼は笑う。 「当然、ノーマルスーツなし、だろうな」 カナードが確認のために声を上げる。 「当たり前だよ。そんなものを着て入れるわけがないからね」 しかも、酸素も限られた量しかない。 それが尽きるぎりぎりまで放置しておくのも楽しいのではないか。 こう言われて、彼も納得したらしい。 「ついでに、その傍にMAでもとばせばいいんだ」 連中の体重が減るだろうな、とカナードは笑った。 「ふむ……護衛の意味もあるから、いいかもしれないね」 ラウと違って、彼には変な対抗意識がないからか。比較的あっさりとうち解けたようだ。あるいは、バルトフェルドの才能と経験にそれなりの敬意を表しているのかもしれない。 そんなことを考えていたときだ。端末がメールの着信を告げてくる。 「ラウからかな?」 それとも、執事からだろうか。そう思いながらギルバートは確認をする。 「ラウからだね。とりあえず、セキュリティには不審者は引っかかっていないそうだよ」 もっとも、警戒は続けているそうだが。その言葉に、他の者達は頷いてみせる。 「では、次のフェーズに移行しようかね?」 この言葉を合図にみなは行動を開始した。 |