根回しその他を終えたのは、それから二日後。そして、作戦の決行は三日後……と決まった。 だが、未だにどうやってキラをごまかすかは決まっていない。 「正攻法でいいと思うがね」 ギルバートが微笑みながらこう言う。 「ギル?」 「サプライズの関係で、ラクスさまと相談してくる。それだけで十分ではないかな?」 内容は内緒で、とそう続ける。 「それで大丈夫かな?」 ラウが疑うような声音で聞き返してきた。 「嘘ではあるまい」 だから、大丈夫なのではないか。そう言い返す。 「後は、レイ次第かな?」 とりあえず、ラクスの元へ着くまではウィッグでごまかせるのではないか。キラが好んでいる服装はどちらかといえばユニセックスなものだ。だから、レイが身につけても違和感はないだろう。そうも付け加える。 「今なら、サイズも問題ないだろうしね」 本人には色々と不本意かもしれないが。その言葉に、ラウは苦笑を浮かべる。 「自分の容姿についてあれこれ言われるのはいやかもしれないが……キラのためなら気にしないと思うよ」 そう考えるように育てたからね、と彼は付け加えた。 「もっとも、本人が嫌がるようなら、無理強いをするつもりはなかったがね」 予想以上に《キラ大好き》に育ってしまったのは計算違いだったかもしれないが。そう彼は続ける。 「そんな彼でも、追い払えない《害虫》が存在しているのが嘆かわしいけれども、ね」 わざとらしいため息とともに彼は言葉を締めくくった。 「アスラン・ザラは特にしつこいからね」 にこやかな表情と共にこう言い返す。 もちろん、ラウが言いたいのが彼ではないということはわかっている。 だからといって、それを認めるつもりはない。 「……まったく、君もしつこいね」 まったく、とラウはため息をつく。 「まぁ、それでなければ君ではないがね」 ともかく、今は考えないようにしておこう。そう付け加えた。 「しかし、ラクスさまの元へ行くなら……誰が残るか、問題だね」 変わりにこう告げる。 「……君か、カナード君だろうね」 不本意だが、と言い返す。 「……何故、かな?」 「ラクスさまの所に行くのに、私が付き添わないことは色々と支障があるからね」 学校から直接行くとき以外と自分がどうしてもはずせない用事があるとき以外は、必ず付き添っていたから、と説明の言葉を口にする。 しかも、前者の時にはクライン家から車が差し向けられていたのだ。 当然、連中もそれは知っているはず。 騙そうとするのであれば、当然、いつもと同じ行動を取らなければいけないだろう。 「……カナードは、戦力として必要なのだがね」 下手にザフトの人間を動かせない以上、彼以上に護衛としてふさわしい人間はいない。 「かといって、キラを一人にするわけにもいかないか……」 そうなれば、やはり残るべきなのは自分ということになるね、とラウは不本意そうな声音で告げる。 「ラクスさまの所にバルトフェルド隊長が待機していてくださるそうだが?」 からかうようにギルバートはこう声をかけた。 「……それが一番気に入らない……」 あの男に手柄をさらわれるのは、と彼ははき出すように付け加える。 「しかし、キラに気付かれるわけにはいかないし……」 どうするか、とラウは本気で悩み出した。 「準備があるから、出来るだけ早めに結論を出してくれるとうれしいね」 そんな彼に向かって、ギルバートは苦笑と共に言葉を投げつけた。 |