「ずいぶん聡い子だね」
 感嘆したとラウは続ける。
「将来はザフトに入りたいそうだよ」
 キラの話では、と付け加えた。
「それは、それは」
 色々な意味で楽しみだ。そう言ってラウは笑う。
「キラの友人だしね。相談に乗れることがあれば乗って上げよう」
 だが、今はそれを考えるときではない。そう告げる彼に、ギルバートも頷いてみせる。
「それで、その不審者というのは……」
「プラントの人間だったよ」
 ラウの言葉の先を読んで、ギルバートは言葉を口にした。
「ただし、あまり質のよくない、ね」
 周囲の評判も芳しくない。そう続ける。
「何でも、有名人や政治家のゴシップをマスコミに売って金銭を得ているらしい」
 まだ、人類が地球上で暮らしていた時代から、そのような輩は存在していた。だから、必要悪だと言えるのではないか。
「……そのような人物が、何故、ここの周囲を?」
 ギルバート目当てなのか、とラウは問いかけてくる。
「……いや。幸か不幸か、彼のねらいは私ではないよ」
 集めた情報によれば、彼はラクスを『政治的意図で故意に作られた歌姫』と言って批判をしていた。だから、少しでも多くの情報を人々の目の前にさらして、その事実を知らしめたいのだとも言っていたとか。
「キラは、ラクスさまと親しいからね」
 彼女が唯一、自分から足を運んでまで会いに来る相手だ。
 ひょっとしたら、と思ったのだろう。
「目の付け所は悪くないと思うがね」
 しかし、それをブルーコスモスの連中に利用されていると気付いていないのは……とあきれたくなる。
「なるほど」
 だが、とラウは笑う。
「逆に取り込んでしまえば、あちらの情報が入手できるね」
 常に監視されているわけではないだろうし、と彼は続ける。
「ラクスさまのことも関係しているなら、協力をしてくれる人間はいくらでも思い浮かぶ」
 そして、手段ならいくらでもあるからね……と彼は笑った。言外にそれは非合法な手段を挿しているのだろう。
「キラには気付かれないようにね」
 とりあえず、こう言っておく。
「もちろんだよ」
 そんなへまを自分がすると思うかね、とラウは笑った。
「ところで、その情報を君にくれた人間なのだが……信頼できるのかな?」
「出来るよ。君も知っている相手だしね」
 もっとも、仲がいいとは言えないかもしれないが。その言葉で、誰のことかわかったようだ。
「なるほど。クライン議長からの繋がり、ということか」
「というよりも、ラクスさまから紹介して頂いたんだけどね」
 この言葉に、ラウは表現のしようのない表情を作る。
「本当に、あの方の人脈は、どうなっているのか……」
 キラと同じ年だとは思えない。そう言って彼はため息をつく。
「ラクスさまだからではないのかな? 何でも、コンサートの時に護衛について貰ったとか」
 だから、ザフトにも協力を頼める者達が多いのかもしれない。そう続ける。
「言われてみれば、納得だね」
 だが、それでも自分が動いた方がいいだろう。言葉とともに彼は腰を浮かせた。
「そういうわけで、少し出てくるよ」
「わかった。キラ達には、隊の方から呼び出されたと言っておこう」
 それでキラは納得をするはずだ。この言葉に、ラウは頷いてみせる。
「後は任せたよ」
 こう言い残すと、彼はそのまま部屋を後にした。






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