二日後には、ルナマリアが一人で訪ねてきた。
「とりあえず、学校であれこれ頼まれた分」
 そう言いながら、彼女はキラに手にしていた紙袋を差し出してくる。
「ごめん、ルナ……ありがとう」
「気にしないで。ほとんど、ラブレターだと思うから」
 だから、読まずに捨ててもいいのよ? とルナマリアは笑う。
「そうなの?」
 今までは呼んでお断りの返事を書いていたんだけど、とキラは首をかしげた。
「本当に、キラは妙なところで真面目よね」
 こう言うのは、相手が出したいから出しているだけで、最初から返事は期待していないのだ。そう言って笑うルナマリアの言葉にレイ達が頷いているのが見えた。
「でも、メールじゃなくて紙に書いたお手紙にはきちんとお返事するのが礼儀だって、母さんが」
 それに、お断りの文面は全部一緒だから……とキラは付け加える。
「……本当にキラらしいけど……」
 それについては、後でラクスを交えて話し合いましょう……と苦笑と共にルナマリアは紙袋を持っていた手を引っ込める。
「ルナ?」
「それまでは、やっぱり私が預かっているわ、これ」
 ここに預けていってもいいけど、キラの手に渡る前に処分されかねないから。そうも彼女は続ける。
 その判断は、正しい。
 やはり、キラの回りには才能のある人間が集まるのだろうか。
 それも全て、キラ本人の資質によるものなのだろう。だが、キラ自身はそれを当然だと思っている。そこに作為はないからこそ、誰もが安心できるのだろうか。
「そんなことはありません!」
 などと考えているギルバートの前で、レイがなんとかルナマリアの手からそれを奪おうとしている。
「そうね。処分はしなくても中を見てそれなりに報復しに行きかねないわ」
 だから、やっぱりダメ……とルナマリアが笑い返す。
「でも、また持ってくのは大変でしょう?」
 自分が見るのも、レイ達が読むのもダメなら……とキラは言葉を綴る。
「執事さんに預かって貰おうか」
 彼ならば、頼めば中を見ないで預かってくれるような気がするが……と付け加えた。そのまま、確認を求めるように視線をギルバートに向けてくる。
「そうだね」
 彼ならそうしてくれると思うよ、と微笑みながら言い返す。
「じゃ、お願いしてみます」
 ルナもいいよね? とキラは問いかけている。
「えぇ。確実に次にここに御邪魔させてもらえるまでこのままの状態で保存されているなら、それでいいわ」
 そうならなかったら、ラクスと一緒に犯人捜しをさせてもらうけど……と彼女は微笑んだ。
 もちろん、それはキラ以外の人間へ向けられたものだろう。
 自分たち――といっても、カナードは除外だろう――にとって《ラクス・クライン》の名前がどれだけ効果的なのか、よく知っているようだ。
「執事さん、呼んでくるね」
 そう告げると、彼女はきびすを返す。そして、奥の方へと走っていってしまった。
「まったく、キラは……」
 そう言うところも好きだけどね、とルナマリアは苦笑と共に告げる。
「……そう言えば、デュランダル様」
 だが、直ぐに表情を引き締めると呼びかけてきた。
「何かな?」
「外にカメラを持った変な奴がいましたけど……マスコミにつけねらわれるようなこと、されました?」
 気になったからこっそりシャメって来たけど、と彼女は続ける。
「少なくとも、私は身に覚えはないね」
 盗撮をするにも、フェンスの外からでは難しいだろうに……とギルバートは付け加えた。
「ともかく、その画像を見せてもらえるかな?」
 自宅のセキュリティにも映っているかもしれない。だが、すこしでも早く確認した方がいいだろう。そう判断をして、こう告げる。
「はい」
 言葉とともに、彼女はポケットから端末を取り出した。
「ひょっとして、キラが学校に来ないのはそのせいですか?」
 画像を表示させながら、ルナマリアが問いかけてくる。
「……それに関しては、とりあえず、内緒にさせておいて貰おう」
 キラに伝わっては困るから、と言外に付け加えれば、わかったというようにルナマリアは頷いて見せた。







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