何かを感じているのか――それとも、彼がごり押しをしたのか――ラウは当面、国内での仕事らしい。
 それがありがたいと思うのは、いつでも好きなときに相談が出来るから、だろうか。
「不審者が?」
 ギルバートの話を聞き終わったラウが顔をしかめながら聞き返してくる。
「とりあえず、まだ敷地内に入ってきていないのでね……不本意だがパトロールをお願いする以外、対処の取りようがない」
 もっとも、その姿を映像に残しておくのは問題はないだろう。
「執事にもそう指示してある。何なら、顔を確認するかね?」
 おそらく、彼は断るだろう。そう思いながら問いかける。
「いや……私が見ても無駄だろう」
 顔を知っているとは限らない。むしろ知らない可能性の方が高いだろう。
 だが、相手の方は自分の顔知っている。
「さりげなく逃げ出して、他の人間が来る可能性の方が高いね」
 そうなれば、特定するまでに時間がかかるか……と彼はため息をつく。
「カナードなら顔を知っているかもしれないが……」
「放っておいても構わないのなら、放っておいた方がいいと思うがね」
 下手に刺激をして強引な行動を取られてはたまらない。そのせいでキラに危険が及ぶ可能性があるならなおさらだ。ギルバートはそう主張をする。
「……確かに、その可能性はあるね」
 この男一人だけだとは限らない。
 数で責められれば、いくらカナードでもキラを守りきれない可能性がある。
「かといって、こちらから手助けを出すと言っても、カナード君は断るだろうしね」
 むしろ『邪魔だ』といわれかねない。
「それなりの実力があるのは事実だが……あの自信過剰はまずいね」
 近いうちに、一度その鼻っ柱を叩き折るか。そうしなければ、彼のためにはよくない。そうラウは続ける。
「それに関しては、君に任せるよ」
 自分では出来ないことだ。いや、やってやれないことはないのだろうが、逆に反発されかねない。
「もちろんだよ」
 それでキラとレイが危険にさらされては意味がないから、とラウは頷く。
「それと、もう一つ相談だが……」
 まぁ、こちらは堅苦しいことではないから……と微笑みながらギルバートは言葉を綴る。
「何かな?」
「キラの卒業式のあたりに、サプライズパーティをしようと思うのだよ。あの子の友人達と親しい方々を呼んでね」
 当然、都合はつけてもらうよ? と言外に続けた。
「……何を急に……」
 あきれたようにラウはそう言い返してくる。
「あぁ、そうか」
 だが、直ぐにギルバートの真意に気が付いたようだ。
「そちらを理由にすれば、あの子に最後まで気付かせずにすむかもしれないね」
 カナードがこちらに来た『野暮用』の口実にもなる。
「そう言うことだよ」
 彼は、今でもキラ達のご両親と付き合いがあるのではないか。だから、卒業パーティの写真などを持っていってもらう。そう言えば、十分な理由にはなるのではないか。そう言って笑みを深める。
「レイにしても、キラに追及されても困らないだろう?」
 もちろん、もう一つの理由も教えておかなければいけないだろう。それでも、パーティのことを内緒にしておきたかった、といえばキラに嫌われることはないはずだ。
「執事も他の者達も張り切っているしね」
 久々だからね、と続ける。
「自分があまり好きではないだけだろう?」
「否定はしないよ」
 あれこれ言ってすり寄ってくる者達はごめんだ。だが、とギルバートは言葉を重ねた。
「でも、キラには色々なことをしてやりたいからね」
 少しでも楽しい思い出を増やしていけるように、といえばラウも頷き返す。
「確かに。しかし、本当にしつこいね、あいつらも」
 どうすればいいのか。本気で考えなければ。そう彼は呟く。
「それも相談しなければいけないが……今はここからバカの関係者を追い出すことを優先しよう」
 そうすれば、余裕が出来る。それから全力で対処すればいい。
「しかし、何か事件を起こしてくれないものかな」
 ため息のと共に付け加えられた言葉に、ギルバートも頷いてしまった。







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