オーブから内密に連絡があったのだろうか。許可に関しては、あっさりと取り付けることが出来た。
 逆に言えば、それだけ厄介な状況なのかもしれない。
「だからといって、キラに悟られるわけにはいかないからね」
 そうすれば、彼女が気に病むのは目に見えている。せっかく、幼年学校を卒業できると喜んでいるのに、だ。
「でも、あの子は聡い」
 こちらが何かを隠していると気付くだろう。
「ごまかせるように、何か別の計画でも立てておくべきかな」
 少なくとも、そうすれば『自分のせいで』と言って落ちこむことはないのではないか。
 口実ならばいくらでも作れる。特に、この時期は……と心の中で呟く。
「ラウと相談だがね」
 だが、彼もこれに関しては反対しないだろう。
「後は……ラクスさまにお声をかけておくか」
 彼女が参加してくれるかどうかはわからない。だが、声をかけておけばいいわけには使える。
「ご本人には怒られるかもしれないけどね」
 自分を利用して、と小さな苦笑を浮かべながら告げた。
「まぁ、キラのためと言えば納得して頂けるだろう」
 彼女もキラには甘いから。それに、むしろ話さない方が後で厄介なのではないか。
「後、どなたに声をかければいいかな」
 そのあたりからラウと相談をすべきなのかもしれない。
「……ふむ……久々に自宅でパーティを開くのもいいかもしれないね」
 今はカナードもいる。それに、キラが卒業するのだから、口実には十分だろう。
「みなも喜ぶだろうしね」
 静かな暮らしもいいが、たまにはぱっと楽しむのもいいのではないか。使用人達も、己の技量を周囲に知らしめることが出来るだろう。
 もっとも、それを進める前に執事に相談をしなければいけないのではないか。
 そう考えて、彼を呼ぼうとしたときだ。
「旦那様」
 タイミングがいいのか悪いのか。ノックの音と共に執事の声が響いてくる。
「入りなさい」
 ともかく、相談するのに丁度いい。そう思って入室の許可を出す。
「失礼します」
 即座に彼は室内に足を踏み込んできた。
「何かあったのかね?」
 いつも穏やかな微笑みを浮かべている彼の頬に、何故か今日は笑みがない。それはどうしてなのか。そう思いながら問いかけた。
「……お屋敷の外を、ここ数日不審者がうろついております。いかが対処いたしましょうか」
 キラやレイに被害があってはいけないと思うが、と彼は続ける。
「そうだね……とりあえず、その男のデーターだけは取っておいてくれるかな。後、敷地内に足を踏み込んだときには、適正な対処を」
 外をうろつく程度であれば、しばらく泳がせておくように。キラとレイのことは、カナードが付いているから心配はいらないだろう。そう告げる。
「かしこまりました」
 では、そのようにさせて頂きます……と彼は頭を下げた。そして、そのままきびすを返そうとする。
「あぁ、丁度いい。相談したいことがあるのだが」
 それを引き留めるためにギルバートは口を開く。
「何でございましょう」
 それに彼はこう聞き返してくる。
「もうじき、キラが卒業だからね。あの子に内緒でお祝いのパーティを開こうかと思うのだが……可能かな?」
 あくまでも身内だけのパーティにする予定だが、と付け加えた。
「それは……久しぶりでございますね」
 皆も喜ぶだろう、とそう言って頷く。
「しかも、お嬢様に気付かれないようにですね。かしこまりました」
 彼の口元には、いつもの笑みが戻っている。どうやら、そちらの方を優先しようと決めたらしい。
「人数などが決まりましたらお教えください。それまでに、出来る準備はさせて頂きます」
 そんな彼に向かって、ギルバートは頷いて見せた。







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