「それで、環境関係のシステム構築を選んだ、と」
 ギルバートの話を聞き終わったラウがこう告げる。
「いけなかったかな?」
 キラが自分で選んだのだが、と言い返した。
「わかっているよ。あの子らしい選択だからね」
 しかし、その仕事がキラの所に回されるように根回しをしたのはお前だろう……とラウは笑う。
「先方にあの子の希望を告げただけだよ」
 向こうもキラの優秀者は耳にしていたらしい。だから、今回は試験の意味もかねて仕事を回してくれたのではないか。
 これで成果を上げられれば、これからも定期的に仕事が舞い込んでくるだろう。そして、あちら関係の仕事であれば、他の方面から横やりを入れられる可能性は低い。
「普通はそれも出来ないのだがね」
 まぁ、キラのために悪いことではない。だからあえてみなかったことにしよう。
「それよりも……近いうちに内密に知人が訪ねてくるが……構わないかな?」
 オーブから、と言外に付け加える。
「……あの子達に不利益になるような相手ではないのかね?」
 それならば構わないが、とギルバートはラウへと視線を向けた。
「もちろんだよ」
 キラとレイも彼には懐いている。そう言って、何故か彼は意味ありげな微笑みを浮かべる。
「もっとも、君にとってはどうだろうね」
 あの二人を溺愛しているからこそ、ギルバートにとってはマイナスになるかもしれない。そう付け加える。
「いや。彼が君についてどう判断するのか。実に楽しみだ」
 間違いなく、だめ出しをされるだろう。
 低い笑いと共に告げられたセリフに、自分に対する敵意が見え隠れしているのは錯覚ではないだろう。
「……出て行ってくれても構わないよ、君は」
 我が家から、とギルバートは思わず口走ってしまった。
「もっとも、あの二人の保護者は君ではなく私だからね。残ってもらわなければいけないが」
 滅多に帰ってこないラウよりも必要があればいつでも連絡が取れる自分の方が、彼等にとってはいいだろうし……と付け加える。
「血縁があるのは私だよ?」
「だが、書類上は私が二人の後見人だ」
 君はまだ、成人していなかったからね……と笑った。
「悔やむなら、自分の年齢を恨むのだね」
 少なくとも自分と同年であれば、自分を頼らなくてもすんだだろう。もっとも、それでもあの二人の傍に誰かを置いておく必要はあっただろうが。
「……本当に、お前は口が減らない」
 あきれたようにラウはこう言ってくる。
「当たり前だろう? 私にとっての武器は、己の頭脳とこの弁論能力だからね」
 これがあるからこそ、今の地位を手に入れることが出来たのだ。
「そして、それだからこそ、あの二人を守れる」
 違うのかな、と聞き返す。
「確かに。それについては否定できないね」
 おかげで、害虫も一匹をのぞいてとりあえず駆除できている。ため息とともにラウはこう告げる。
「もっとも、一番厄介な虫だけは駆除できないが」
 自分ももっと偉くならなければいけないのか、と彼は続けた。
「それは誰のことかな?」
「言わなくてもわかっていると思うがね」
 現実はきちんと見つめるべきだと思うが? とラウは言い返してくる。
「キラもかわいそうに。こんな親戚がいればいつまで経っても、恋人が見つけられない」
 途中で邪魔をされるのだね、とあきれたような表情を作った。
「君以外で、あの子にふさわしい人間であれば、とりあえず認めて見るつもりだがね」
「その選別は君が行うのだろう?」
 それだけでハードルが高いように思えるのだがね、とため息をついてみせる。
「何。お前以外にはかなり低くしておいてやるつもりだよ」
 本当に、ああいえばこう言い返してくる。
 この男の鼻っ柱を叩き折ってやりたい。相手もそう思っているであろうことは否定できないだろう。
 もっとも、その過程も楽しいのだ。だからこそ、友人なんてやっていられるのかもしれない。そんなことを考えていた。







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