十三歳になれば、保護者の許可を得てアルバイトをすることも可能だ。それは、プラントが慢性的に人手不足、ということもある。
 といっても、実力がなければ仕事を任せられることはない。
「君が優秀なことは知っていたが……」
 まさか、これほどまでとは……とギルバートは感嘆したように付け加える。
「……ごめんなさい……」
「何故、謝るのかな?」
 感心しているだけだよ、と微笑みを向けた。
「私が君の年には、こんなに来なかったからね」
 しかも、キラに手伝って欲しいと言っているのはプラントでもそれなりに重要な立場の部署だ。それだけでも感嘆に値する。そう続けた。
「君の実力がみなに認めてもらえるのは嬉しいしね」
 もっとも、できれば閉じ込めておきたい気持ちがあることも否定できないが。
 これでまた、キラの周囲が騒がしくなるだろう。
 今、キラの側にいる面々だけでも厄介なのに、さらに増えたらどうなるのか、わかったものではない。
「でも……」
 そんなことを考えていれば、ギルバートの耳にキラの声が届いた。
「僕のせいで、ギルさんに余計なお仕事を増やしてしまいました」
 それらの書類に全部目を通さなければいけないのだろう? と彼女は付け加える。
「大丈夫だよ。これは別に決済をして対策を考えなければいけないわけではないからね」
 中を確認して、キラにとってマイナスになると思われる依頼を断っていけばいいだけのことだ。
「最終的に、どこの依頼を受けるか。それを決めるのは君だよ」
 助言して欲しいと言われればいくらでもするが、とそう付け加える。
「……僕が決めていいんですか?」
 その言葉に、キラが驚いたというように目を丸くした。
「どうかしたのかな?」
 何故、彼女は驚いているのか。その理由がわからない。
「だって、みんなのお家ではお家の人が決めるって……」
 もっとも、以前から仕事をしているラクスは別だが、とキラは続ける。
「それは、きっと、そのお家の人たちは自分の子供がまだ信用できないから、だろうね」
 しかし、とギルバートは微笑みを深めた。
「私は君の実力をよく知っている。だから、どこの仕事を引き受けても失敗はしないだろうと信じているからね」
 問題があるとすれば、それこそ、仕事の依頼をしてくる相手の方だ。
「迂闊な相手に君を預けるわけにはいかないからね」
 しかし、その選抜は自分にとっては苦ではないから……とも付け加えた。
「普段の仕事の延長だからね」
 それに関するデーターも持っている。だから、キラが気にすることはない。
「しかし……これも、公私混同、というのかな?」
 ふっとこう呟く。
「ギルさん!」
「だからといって文句は言われないよ」
 ここに入っているデーターだけを使うから。そう言いながら、ギルバートは自分の頭を指さした。
「それよりも、キラはどの方面の仕事をしたいのかな?」
 今でなくてもいい。将来のことも含めて、と聞き返す。
「このままプラントにいるにしても、オーブに帰るにしても、希望の職種に近い仕事をするのは重要だと思うよ」
 その経験は間違いなくキラの財産になる。
 この言葉に、キラは首をかしげた。
「僕は……開発とかしてみたいです」
 オーブで父がそちらの仕事をしていたから。そう言って、彼女は微笑んだ。
「なるほどね」
 やはり、身近な大人の影響は大きいと言うことか。そう思いながら頷いてみせる。
「でも、直接、ザフトのお仕事をするのは……やっぱり、まずいんじゃないかと思うんですが」
 その主張はもっともなものだ。そう思って頷き返す。
「では、明日までにいくつかに絞っておくよ」
 ギルバートのこの言葉にキラはほっとしたような笑みを浮かべた。







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