目の前に、ふてくされているという表情を隠さないユウナが座っている。
 もう少し態度を取り繕えばいいものを。そう思っているのは自分だけではないだろう、とギルバートは心の中で呟いた。
「いったい、何故、ここにおられるのですか?」
 にっこりと微笑みながらギルバートは問いかける。もちろん、それはあくまで、口元だけのことだ。
「使節団の方の単独行動は許可されていなかった、と記憶しておりますが」
 第一、どうやってチケットを取ったのか、と言外に付け加える。
「……そんなこと、どうでもいいだろう!」
 見て見ぬふりをすればいいだけではないか、と平然と言い返してくるあたり自分がしたことがどれだけ外交面で不利になるのか、わかっていないらしい。
「残念ですが、ここはオーブではなくプラントです。我が国からの使節団も、貴国では同じように行動を制限されておりますが?」
 それとも、同じように見て見ぬふりをしてくれるのか? と逆に聞き返す。
「あぁ。それがあなただけの口約束にならないように、公文書をここで作ってくださるなら、見て見ぬふりをして差し上げますが?」
 もちろん、ユウナの直筆の署名入りで……と付け加えた。
「……それは……」
 流石に、そこまでしては自分の立場が悪くなる。それくらいは判断できるようだ。
「お出来にならないのでしたら、ご要望は受け入れられませんね」
 理由も説明できないのであれば、プラントの法律で適性に処分させて頂く。そう付け加える。
「もちろん、理由如何では同じように処罰されるものと思ってください」
 この言葉に、ユウナの顔が怒りで赤く染まった。
 まるでそのタイミングを待っていたかのように、ラウが顔を見せた。
「とりあえず、オーブの使節団の方々とは連絡が取れたよ」
 意味ありげな微笑みと共に彼は言葉を重ねる。
「何でも、あちらの言い分ではユウナ・ロマ・セイランはホテルにいらっしゃるそうだ」
 つまり、ここにいるのはその名前をかたったただの不埒ものと言うことになるね。そう言いながらラウは視線を向けた。
「嘘だ!」
 ウナトが自分を見捨てるはずがない! とユウナは騒ぐ。
「残念だが事実だよ」
 確認するかね? と口にしながら、ラウは彼の前に端末を差し出す。そこにはあちら側からの回答が表示されていた。
 間違いなく、そこには『ユウナ・ロマ・セイランは現在、自分たちと共にいる。そこにいるのはその名をかたる不埒ものであり、プラント側の反オーブ政略だろう』と書かれてあった。
 それを確認した瞬間、ユウナの顔から血の気が失せる。
「こんなの、お前達の捏造だ!」
 だが、次の瞬間公叫ぶと同時に手にしていた端末を床に投げつけた。
 しかし、その程度で壊れる様子は見せない。さすがはザフトでしようされているだけのことはある、とギルバートは別の意味で感心してしまった。
「キラを呼べ!」
 ユウナにとっては、それは忌々しいだけだったのか。今度は大声でこう叫び出す。
「あいつなら、僕が《ユウナ・ロマ・セイラン》だと証明できるだろう!」
 さっさと呼べよ! と地団駄を踏み始めた。
「残念だが、その希望は叶えられない」
 キラは民間人でまだ未成年だから、とギルバートは言い返す。
「それとも、オーブでは未成年を犯罪者に面会させておられるのかな?」
「ボクは、犯罪者じゃない!」
 ギルバートの言葉にユウナが反発をする。どうやら、本当に自分が何をしでかしたのか理解していないのか。それとも、オーブならこれが許されるのか。
 どちらにしても、目の前の男の見識にはあきれるしかない。
「犯罪者ですよ。あなたは暴動を示唆した」
 実際にそうではなかったとしても、そうしたと判断できる行動を取った。
 それだけで、十分、この国では犯罪になる。
「もし反論されるのでしたら、アプリリウスワンに戻られてからにするのですね」
 部下の方々共々、護送させて頂く。そう言いきった。
「ボクは!」
 受け入れるつもりはない、とユウナが叫ぶ。しかし、それを無視してラウは部屋の外にいた者達に指示を出した。







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