子供達が眠ったのを確認してから、二人は罠の舞台となる会場へと足を運んだ。
「なるほど」
 そこには、既にステージが作られてある。そして、その前にあるのはキラを含めた子供達の席だろう。
 さらにその席を囲むようにザフトの者達の席が作られている。
「とりあえず、迂闊には近づけないようだね」
「絶対に近づけない、と息巻いているよ、彼等は」
 あの時のことをどこからか聞きつけたらしい。ラウはそう言って笑った。
「なるほど」
 女性が少ないプラントで、あんな発言をすること自体、許されないことなのだ。
 何よりも、その言葉を投げつけられたのが《キラ》だということも関係しているのかもしれない。
「君があの子の写真を身近に置いておいたのも無駄ではなかった……と言うことかな?」
 苦笑と共にギルバートはラウに問いかける。
「そうだね」
 当面は、と苦笑と共に頷いてみせた。
「何か不満があるのかな?」
 その言葉にギルバートは目を細める。
「君と同じような存在を増やした、ということがね」
 キラを嫁に、と呟くものがいるだけだ。流石に、写真そのものは盗まれることはないが、焼き増しは頼まれる。そう彼は続けた。
「まぁ、流石に断っているがね」
 何に使われるかわかったものではない。その言葉に、ギルバートも苦笑を浮かべつつ同意をしてみせる。
「とりあえず、キラ達の傍には、妻帯者を座らせる予定だがね」
 盗撮防止用に、とさらにラウは付け加えた。
「……ラクス嬢のコンサートだ。それを盾に、広報以外の撮影を禁止してしまえばいいのではないかな?」
 そうすれば、軍人である以上、逆らえないのではないか。
「それはいいかもしれないね」
 確かに、とラウも頷いてみせる。
「なるほど。ラクス嬢が君を呼び出すように言うわけだよ」
 自分たちではその方法は思いつかなかった。そう言ってラウは笑った。
「君達はもっと直接的な方法をとることが多いからだろう」
 それがプラントを守るためには大切なことだ。そう言ってギルバートは笑い返す。
「とりあえず、後でアマルフィ議員に頼んでおこう」
 彼の言葉であれば、他の者達も文句は言えないはずだし。そうラウは付け加える。
「後は……あの男達をどこに座らせるか、だね」
 ばれないように、とギルバートは周囲を見回す。
「一応、あそことあそこが民間人のスペースだよ」
 ユウナ達はあそこに座ることになる。
 民間人にも被害を出さないようにしないといけないのだが……とラウはわざとらしいため息をついてみせた
「ところで、純然たる《民間人》は何人いるのかな?」
 意味ありげな笑みと共に聞き返す。
「あちら側の席は全員そうだよ」
 にやりと笑いながら、ラウは告げる。
「なるほど」
 ユウナ達が座る側は民間人を装った軍人であちらは普通の民間人のための席らしい。
「しかし、どうやって区別するのかな?」
「あの男の関係者以外は、みな、招待状を持っているからだよ」
 この地には軍人か、それに関わる企業の人間しか住んでいない。だからこそ、事前に根回しをするのは難しくなかった。ラウがそう言う。
「なるほど……知らずに来るのはユウナ達だけ、ということか」
 これならば、間違いなくキラ達に危険が迫る可能性は少ないだろう。
 しかし、気を抜くわけにはいかない。
「なら、なおさら気を引き締めなければね」
 ギルバートのこの言葉に、ラウも「そうだね」と頷いた。







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