流石のユウナも、ここまでは押しかけてこられないらしい。
 それは当然だろう。
「よく許可が出たね」
 ラクスやアスランだけならばともかく、他の者達も……とギルバートは付け加える。
「他の子供達も最高評議会議員の子弟だし、軍関係の方も多いからね」
 それに、キラとレイは自分の親戚だと言うことで許可が出た。そう言ってラウは笑う。
「キラは、実はみなのアイドルだし」
 ザフトの中で、と彼は付け加えた。
「ほぉ……いつの間に」
 あきれながらギルバートは聞き返す。
 どうせ、その一端をハンドルを握っている男が担っているはずだ。執務室の机なり戦艦の私的スペースなりに二人の写真を飾っているのは想像に難くない。
 もっとも、自分も人のことは言えないが。
 自分の執務室の机には、キラとレイ、そして自分が写っている写真があるのだ。
「……疲れたときの癒しは必要ではないかな?」
 微苦笑と共にラウは聞き返してくる。
「否定はしないよ」
 確かに、とギルバートは頷いて見せた。
「どころで、二人は?」
 しかし、出迎えてもくれないとは……と思いながら問いかける。
「アマルフィ議員が連れて行ったよ。他の子供達と一緒に」
 何でも、開発中の機体を見せたいらしい。男の子達はそういうものが好きだから、とラウは苦笑を浮かべながら言い返してきた。
「私は君を出迎えなければいけなかったからね」
 だから別行動をしたのだ、と彼は続ける。
「……アマルフィ議員がご一緒なら心配はいらないだろうね」
 彼――と言うよりは、彼の奥方と言うべきか――もキラを己の息子と結婚させたいと思っているようだから。だから、ニコルの株を上げようとはしても、キラを危険にさらすはずはない。
「とりあえず、あのバカ達の居場所は確認しておいた方がいいかな?」
 一応、監視の目は付けてあるが。ラウの判断を仰ぐようにギルバートは視線を向ける。
「流石、というべきなのかな?」
「当然のことだろう?」
 危機管理という点では、と付け加えた。
「確かに。そう言う点ではあの馬鹿馬鹿しい服装も役に立つのか」
 かなり離れていても確認できるからね、とラウは頷いてみせる。
「途中で着替えたとしても、彼等の目はごまかせないしね」
 素顔はばれているのだから、と笑いながら告げた。
「ナチュラルらしいナチュラルの典型だからね、彼は」
 とりあえず、ホテルがわかり次第、周囲に監視役の人間を向かわせよう。ラウもそう言った。
「もっとも、直ぐに手出しできないのは辛いがね」
 流石に、と彼は続ける。
「普通に逮捕するだけならば、今の状況でも可能だが……それでは物足りないのだろう?」
「当然だよ」
 やるなら徹底的に。
 少なくとも、二度とプラントに足を踏み入れられないようにしないと……と彼は笑った。
「本当は、オーブでも失墜させたいのだがね」
「……それについてなのだが……」
 人の悪い笑みと共にギルバートが口を開く。
「こちらが保存してあるあのバカの言動」
 あのパーティの時のものに関しては、監視カメラと録音装置は別のものだ。しかし、監視カメラの方にもあの決定的な一言は収録されている。
「それらをオーブでも閲覧できるようにアップしたらどうなるかな?」
 キラはコーディネイターであると同時に女性だ。そして、ユウナのセリフは女性に対する蔑視のセリフだとも言える。
「少なくとも、女性からの人気は下がると思うがね」
 そう付け加えれば、ラウは楽しそうに唇の端を持ち上げた。
「そう言うことなら、サハクの二人にも協力して貰おう」
 彼等はいつでもユウナを追い落としたいと思っているようだし。材料は多い方がいいだろう。
「そのあたりは任せるよ」
 ギルバートはそう言って笑った。







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