『だから、教育的指導だよ』
 ギルバートの疑問に、ラウは微笑みと共に言い返してくる。
『もっとも、あのころの私はまだまだ若かったのでね。多少やりすぎたかもしれないけどね』
 まったく後悔はしていないが。そう付け加えたあたり、ラウの受かりの深さが推測できる。
「……深く追及するな、ということかな?」
 しかし、自分としてはその内容が聞きたいのだが、とギルバートは心の中で呟く。そうすれば、ユウナを完璧に追い払えるのではないか。
『想像にお任せするよ』
 にやりと笑いながら彼は言い返してくる。
「まぁ、付き合うのはやぶさかではないがね」
 ストレス解消にはなるかもしれない。
 だが、仕事が滞るのは問題ではないか。
「こちらも、あれこれ手を回したいのだがね」
 邪魔をしてくれる人間がいては、それも難しい。そう言ってギルバートは顔をしかめてみせる。
「まったく……困ったものだよ」
 いっそのこと、さっさと盛大に自爆してくれないものだろうか。そんなことすら考えてしまう。
『おやおや。珍しくもめげているようだね』
 苦笑と共にラウがこう言ってきた。
「君も二時間ごとに押しかけられてみればわかるよ」
 退散してくれてほっとした瞬間、また押しかけてくることもある。
「まったく。誰かが私の足を引っ張りたくて嫌がらせをしているのではないかとすら思うよ」
『あぁ。その可能性は否定できないな』
 あちらこちらに恨みを買っているだろう、ラウはあっさりと口にしてくれた。そんな自分はどうなのか、とそう言い返したい。
『だが、それよりも軍か行政府にブルーコスモス関係者がいる可能性の方が高くはないかな?』
 それよりも早く、ラウがこう言ってくる。
「それならば、キラの居場所を知らないことのほうがおかしくはないか」
 どちらにしても、調べようとすれば調べられるはずだ。なのに、あのバカには伝わっていないようだし、とギルバートは口にする。
「もっとも、君達がラクスさまと行動を共にしていることは、一部の人間しか知らないが」
 つまり、その中にはブルーコスモス関係者がいないと言うことだろうか。
『それを確認するのは難しいか』
 下手なことをすれば、キラ達が危険にさらされかねない。
「子供達の安全を確保できるなら、試したいところだが……それよりも、あの男の自爆を誘う方がいいかもしれないね」
 でなければ、さっさと本国におかえり頂くか、だ。
『そのことだがね。ラクスさまにお考えがあるそうだよ』
 いくら連中でも手出しできない方法で、自爆を誘うおつもりらしい。そう言って、ラウは笑う。
「それは……恐いね、色々と」
 ラクスのことだから、おそらく失敗することはないだろう。
 だが、別の意味で怖いと思うのは気のせいだろうか。
『あまり深く考えない方がいいのではないかな?』
 ユウナを自爆させることがメインなのだから、何があっても自業自得だろう。
『もっとも、君に何か策があるというのであれば、話は別だが』
 あったら、連絡などしない。そう心の中で呟く。
「残念だが、私の持っている権限はささやかなものでね。とりあえず、あの男の暴言だけはしっかりと録画させて貰っているが」
 一度目は流石に間に合わなかった。しかし、二度目以降はしっかりと確保してある。
 それを使って、正攻法にでようかと思っていたところだ。そう口にした。
 この言葉を聞いた瞬間、ラウが視線をそらす。ひょっとして、モニターに映らないところに誰かいるのだろうか。
『後で、今手元にある分だけおくってくれないか?』
 だが、直ぐに視線を戻すとこう言ってきた。
「何に使うのかね?」
『もちろん、キラのために決まっているだろう』
 ついでに、バカに新たな教育的指導をさせて貰おうか。そう言ってラウは笑みを深める。
「そう言うことなら、君のメールアドレスにおくっておくよ」
 ただし、事前に何に使うのか連絡を城。そう付け加えれば、ラウは頷いて見せた。







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