「本当に、何をしていたんですか」
 あきれたようにレイがため息をついてみせる。
「どうせ議論をするなら、あのバカをこの世から完璧に消す方法でも考えてください」
 そして、そのままの表情で彼はこう続けた。
「その方がよっぽど姉さんのためです」
 ついでに、オーブも平和になるのではないか。その言葉には思い切り納得してしまう。
「カガリさんのことも考えないと」
 しかし、このセリフは何なのだろうか。
「……あの子は、無事だよ。安心しなさい」
 表立ってではないが連絡も取れる。そうラウが言い返した。
「そう言う君も、トダカ氏と話をしたのだろう?」
 何か情報はなかったのかな? と彼は付け加える。
「特に変わったことは……ただ、ウズミ様と話をしづらくなったとか、とは言っておいででした」
 それでもホムラとは連絡が取れるから、まださほど心配はしていないといっていた。彼はそう続ける。
「でも、いつまでもこの状態が続くようならどうなるかわからないとも口にしていましたが」
 だが、それはそうだろうと自分も思う。
 言葉は悪いが、現在のオーブは《ウズミ・ナラ・アスハ》という人間が代表にいるからこそまとまっていると言える。
 行政府にしても軍にしても、ウズミの存在があるからこそ何の支障もなく動いているのではないか。
「あと……カガリさんとあのバカの婚約が正式に決まりそうだとか」
 それなのに、何故、キラに手を出そうとするのか。自分には理解できない……とレイは吐き捨てる。
「心配するな。私にも、だ」
 思い切り軽蔑してやれるがな、とラウも頷く。
「……でも、一番怖いのはあの人にこちらでのあのバカの言動が知られることだと思いますが?」
 無条件で撃墜しに行きそうだ。レイはさらに訴えてくる。
「……ロンド・ミナが見張っていてくれるから、心配はいらないと思うが……」
 ロンド・ギナが何をしてくれるか、という問題もあるな。ラウはそう言ってため息をつく。
 彼が口にした言葉には、ギルバートも聞き覚えがある。
「……サハクの双子かな?」
「あぁ。二人とも、キラとレイを可愛がってくれていてね」
 ついでに、もう一人も懐いていたから彼の方はあちらに預けてきたのだ。ラウはそう言う。
「もう一人?」
「……俺や姉さんと一緒に育った人です」
 彼は男だし、自分の身を自分で守れる程度の技量を身につけていたから、オーブに残ったのだ。レイが説明の言葉を口にする。
「しかし、正体さえばれなければいい方法かもしれないね」
 撃墜というのは、とラウは低い声で笑う。
「デブリと激突してくれるのもいいかもしれない」
 そうすれば、キラ達のことだけではなくオーブに巣くっている厄介な問題も一掃できるのではないか。そんなセリフまで彼は口にする。
「といっても、現実になれば、地球連合が大騒ぎをしてくれるだろうね」
 ブルーコスモスにテロの口実を与えかねない。だから、実行に移すことは難しいか。
 本当に残念そうに付け加えられた言葉が、彼の本心なのは間違いないだろう。
「とりあえず、これからのキラの予定はどうなっているのかな?」
 ギルバートのことだ。使節団が帰るまで、連中がキラと接触が出来ないような手はずを整えているのだろう? と口にしながらラウが視線を向けてくる。
「ラクスさまと一緒に、別のコロニーに自然体験をしに行くことになっているよ」
 もちろん、そこにはオーブの方々は立ち入り禁止だ。ギルバートはそう言って笑う。
「レノア・ザラが時間を取って一緒にいてくださるそうだ」
 もっとも、できればもう一人、誰かが傍にいてくれれば安心なのは言うまでもない。そう言いながらギルバートは意味ありげに笑う。
「一緒に行くかね?」
「もちろんだよ」
 即座にラウが言い返してくる。
「それも私を呼び戻した理由ではないのかな?」
「否定はしないよ」
 では、準備させておこう。この言葉に、ラウは頷いて見せた。







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最遊釈厄伝