レイ達がさりげないそぶりで問題の人物へと歩み寄っていく。
「デュランダル君」
 それに気がついたのか。タッドがそっと声をかけてきた。
「どうして、彼等は?」
「……この子達の知己らしいので声をかけたいのですが……あちらの方々に気付かれたくないので、申し訳ないのですがご子息達を名目にさせて頂きたいのです」
 あちらの軍のシステムに興味があるということで、とギルバートは口にする。
「それは構わないけどね」
 というよりも、その位しか今のディアッカは役に立たないだろう。その言葉に苦笑を浮かべるしかできない。
「それにしても……あちらの言動が解せないのだが」
 キラとレイがこちらに避難してきたときの書類に不備はない。むしろ、これ以上ないほどきっちりと整えられていたと聞いているのだが……と彼は眉根を寄せた。
「……キラはアスハに連なる家系の人間です」
 そうだったね、と確認のためにキラに視線を向ける。
「はい……父さんが、ウズミ様の遠縁です」
 そして、ウズミには自分と同じ年の子供がいるから、そう言う意味でもよく行き来をしていた。キラはそう付け加える。
「なるほど。それで彼に目をつけられたと」
 でなければ、ユウナが自分からコーディネイターに近づくとは思えない。
 しかし、それにしては異常とも思える執着ぶりではないか。そう考えてしまうのは、セイランがプラントよりも地球連合に尻尾を振っていると存在だと知っているからだ。
 あるいは、とギルバートは心の中で呟く。
 キラには、もっと別の秘密があるのかもしれない。それを本人やラウはもちろん、レイも知っているのではないか。
「それにしても、困ったものだね」
 知らない以上、自分にはそれに関してフォローのしようがない。
 だが、それを自分に知らせるわけにもいかないと彼等は判断していると言うことだ。
 これは、別の意味で努力をしなければいけないな……と付け加える。
「確かに」
 タッドはそれを別の意味に受け止めたらしい。
「あちらが正式な使節である以上、ある程度のことは妥協しなければいけないからね」
 もちろん、キラの意志の方が優先だろうが。そう言ってくれるのは、あの男の危険性を認識したからだろうか。
「とは言っても、既にキラ君はプラントの人間だ」
 ついでにうちの愚息のお嫁さんになるかもしれないお嬢さんだ、と付け加えられたような気がするのは、空耳だろうか。
「ディアッカ。どうかしたのか?」
 だが、それをつっこむ前にレイと共に行ったディアッカがこちらに戻ってきたのだ。
「あのおっさん。やっぱり、キラに伝言があったみたいなんだけどな」
 ただ、と彼は顔をしかめる。
「レイが近づいただけで他のオーブの軍人達が視線を向けてきた」
 これがキラなら、逃げられないように回りを取り囲むくらいしかねない。そう彼は続けた。
「だから、逃げるなら別ルートの方がいいんだろうが……」
 問題は、キラとラクスが使えるルートがあるかどうか。そう彼は付け加える。
「大丈夫ですわ。一度、テラスから庭に降りてみたいと思っておりましたの」
 にこやかにラクスがこういった。その言葉に、誰もが微苦笑を浮かべる。
「では、そうしてください」
 だが、直ぐにディアッカはこう言い返す。
「俺は、あいつらにそう言ってきます」
 この言葉に、ラクスとキラはしっかりと頷いた。
「では、移動しましょう」
 人によったと言えば、テラスに移動しても誰も不審に思わないだろう。ラクスはそうも付け加える。
「そうですね。そうしましょう」
 にこやかな口調でディアッカが頷き返す。しかし、キラの表情だけはどこか不安げだった。







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