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ともかく、キラとあいつを二度と接触させてはいけない。 オコサマ達はそう結論を出したようだ。 「……式典が終わりましたら、直ぐにわたくしの控え室に行きましょう」 あの男は危険です。ラクスはきっぱりと言い切った。 「キラのためだけではなく、プラントに悪影響を与えます」 あくまでも自分の感じた印象だが、と彼女は続ける。 「いや……俺も同じ印象をあの男に抱きました」 ラスティもそう言って頷く。 「少なくとも、キラ嬢を見る視線は……人間を見るそれじゃなかったですから」 本気で、何か対策を取らなければヤバイ。そうまで付け加える彼に誰もが表情を強ばらせた。 「ならいっそ、誰かと名目だけでも婚約させておけばいいのでは？」 目を輝かせながら、アスランが口を挟んでくる。それは言外に《自分》をキラの《婚約者》に、と告げたいのではないか。そんな彼の様子にギルバートは苦笑を浮かべる。 「……それは、無理だと思う」 こう言ってきたのはキラだ。 「キラ？」 それはどういうことか。そうディアッカが問いかける。 「前に似たような話が出たら、適当に相手を決めつけていじめてくれたもん」 そのせいで、オーブには自分の友人が一人もいなくなってしまったのだ。キラはそう付け加える。 「僕は、あの人のおもちゃじゃないのに」 その言葉に、ユウナに対する怒りがわいてきたのは、自分だけではないだろう。 「よく、ラウが我慢していたね」 それを落ち着かせようと深く息を吐き出す。その後で、ギルバートはこう口にした。 「だから、ラウ兄さんは先にプラントに来ていたんですよ」 こう言ってきたのはレイだ。 「いざというときの避難場所を確保、と言うよりは犯罪者になるのを未然に防ぐためだったと思いますよ」 自分たちのことは、とりあえず、アスハとサハク、そしてマルキオがなんとか守ってくれていたから。そう彼は続ける。 「しかし、ここまで追いかけてくるとは思ってもいませんでした」 その言葉に、キラも頷いて見せた。 「あの人、コーディネイター、嫌いなのに」 というよりも、コーディネイターを人間としてみていないのに……とキラは呟くように口にする。 「それだけ、キラに執着をしているということか」 本気で厄介だね、とギルバートは眉根を寄せた。 「もっとも、ここで彼が迂闊な言動を取れば、即座に国際問題になる。その認識が彼にあるといいのだがね」 あの様子では難しいね、とため息をつく。 「だが、心配しなくていい。ここはオーブではなくプラントだからね」 彼の無茶の手助けをする人間はいない。 父親にしても、ここでユウナが馬鹿な行動を取ればどうなるかわかっているはずだ。 「何よりも、私がいるだろう？」 キラとレイを守れる程度の力は持っているつもりだからね、と微笑んでみせる。 「はい」 それにキラも微笑みながら頷いてくれた。 その事実が面白くないのだろうか。オコサマ達は忌々しそうな表情を向けている。しかし、キラの視線が彼等に向けられた瞬間、慌ててそれを隠そうとしているのは笑っていいのだろうか。 「あらあら」 ラクスにはそんな悩みはないらしい。 「本当に皆様、楽しいですわね」 でも、キラは渡しませんわ。そういいながら彼女の体をしっかりと抱きしめる。 「それよりも、お父様の演説をお聞きになってくださいませ」 さらりと受け流すあたり流石としか言いようがない。 「……それが終わってから皆様の出番になると思いますよ」 間違いなく、また、ユウナが押しかけてくる。その彼の邪魔をして、キラと自分が逃げる時間を稼ぐのはアスラン達の役目だ。そう言って彼女は微笑む。 「お出来になりますわよね？」 ラクスの言葉に、アスラン達は直ぐに頷いてみせる。これは、キラと一緒に逃げられないと言うことに気付いていないのだろう。それに気がついたらどんな騒ぎになるのか。 見てみたいような見たくないような。 ギルバートはそんなことを考えていた。 |