「……ユウナ・ロマ・セイラン……」 忌々しさを隠せない、といった様子でレイが相手の名前を吐き捨てる。それを耳にした瞬間、アスラン達の表情が強ばった。 「キラ、大丈夫ですわ」 そして、ラクスがさりげなく彼女の体を自分の方へ抱き寄せる。 「キラ、どうしたんだい?」 しらじらしいまでに大げさな仕草でユウナが両手を広げた。 「久々の再会を喜んではくれないのかな?」 そのまま、キラの方へと足を踏み出そうとする。そんな彼の行く手をアスランがさりげなく遮った。 「何だ?」 「申し訳ありませんが、人の婚約者に迂闊に近寄らないで頂けますか?」 その彼のセリフに、ユウナは顔をしかめる。その表情のまま、彼はキラをにらみつけた。 「第一、ここはプラント側ですよ? そもそも、あなたは何の権利があって足を踏み入れておいでなのか」 その視線を遮るかのようにイザークが一歩前に出る。 「最高評議会議長閣下の挨拶が終わらぬうちに他国の人間に声をかけられるのは無礼だと言われていますが?」 それとも、オーブの人間は見なそうなのか。彼はそう言ってユウナをにらみつける。 「だが、キラは……」 その気迫に気おされながらも、ユウナは言葉を返そうと口を開く。 「出身はともかく、今はプラントの人間だろう、キラは」 ディアッカがあきれたような声音でこういった。 「少なくとも、書類上はそうだな」 イザークが小さく頷いてみせる。 「母上がそうおっしゃっていらっしゃったから、間違いないはずだ」 プラントの法律を担う者達をまとめている彼女の言葉に偽りなどあるはずがない。そうイザークは言い切った。 「兄さんが、そう手配をしてくれたはずです」 レイがキラの腕を抱きしめながらきっぱりと断言をする。 「でないと、避難をする意味がなくなりかねませんから」 どこかのバカに連れ戻されかねない。それでは、キラの身がどうなるかわかったものではないだろう。そう付け加えたのは、彼なりの皮肉なのだろうか。 「ともかく、席にお戻りいただけますか?」 このまま、ユウナをここにいられるわけにはいかない。そう判断をしてギルバートは子供達の間に割ってはいる。 「せめて、議長とセイラン首長の演説が終わるまでは、ご自分のお席にいていただくとありがたいのですが」 そう言いながら、歩み寄ってきた警備のものに目配せをおくった。 「ボクは、お前達と話をしに来たわけじゃない!」 ユウナがそう叫ぶ。 「……ずいぶんとワガママで無礼な方ですね。本当に友好使節団に一員なんですか?」 侮蔑を隠さずにニコルがラスティに問いかけている。 「お情けで加えて貰ったっていうのが丸わかりだよな」 それとも、親の七光りのせいか? と彼は即座に言い返した。 「否定できませんわね。最低限のルールもお守りになれないような方では」 ラクスまでもがこういう。 「最低ですわ。それとも、ナチュラルの男性の方は皆様、こうなのでしょうか」 さらに追い打ちをかけるように彼女は言葉を口にした。 「そんなことは、ないと思う」 ぼそっとキラは呟く。 「キラ!」 「父さんやウズミ様やマルキオ様は、誰からでも尊敬されていると思うよ」 他にもキサカ達は立派な人だから、きっとラクスも好きになるよ……と彼女は続けた。その中には、もちろん、ユウナの名前は出てこない。 その事実に、ユウナが不満を隠さずに何かを言い返そうとしたときだ。 「さて、お戻りいただけますか?」 そう言いながら、評議会議員の一人がユウナの肩に手を置く。 「でなければ、式典が始められませんが?」 あなたのワガママのせいで、といわれればユウナもこれ以上、文句は言えないらしい。 「後で、ゆっくりと話をしよう」 そう言うと、そのままきびすを返す。 「誰が、貴様などとキラを話させるか」 ぼそっとイーザクがこう呟く。それに誰もが頷いて見せた。 |