流石に警備が厳しい。
 それは、オーブの使節団を迎える以上、当然のことだと言っていいだろう。
 しかし、だ。それ以上に警備が厳しいと言えるのはこの一角なのではないだろうか。
「……ギルさん……」
 不安そうにキラが見上げてくる。
「心配はいらないよ。子供達を守るのは大人の義務だからね」
 まして、ここにはラクスも他の子供達もいるだろう? と付け加えれば、キラはとりあえず納得したようだ。
「それにしても……今回は予想以上に人が多いね」
 子供の数も含めて、と微かに眉を寄せる。
「そうなのですか?」
 こう問いかけてきたのはレイの方だ。
「そのようですわね。わたくしも、お顔を見たことがない方がいらっしゃいます」
 少なくとも、評議会議員関係の子女の顔は覚えているのだが。そう言ってきたのはラクスだ。
「確かに。評議会関係者ではない人間の子供がいますね。半分ぐらいは軍の関係者のようですが」
 さらにアスランも口を挟んでくる。
「ラクス嬢とキラ嬢がいらっしゃるからな。知己になりたいと思っているのだろうが……厄介だな」
「そうですね。下手な人を近づけると、後々厄介になります」
「まぁ、そのあたりは俺たちが適当にフォローするしかないんじゃね?」
 さらに他の三人もこんなセリフを口々に言った。
「どうせなら、もう一人増やすか?」
 ディアッカがさらにこんなセリフを口にする。
「そうすれば、絶対にバカは近寄ってこられないぞ」
 胸を張りながらそう言う彼にラクスが不審そうな視線を向けた。
「いったい、どなたに協力を求められるおつもりですの?」
 その表情のまま彼女はこう聞き返す。それは自分も知りたいことだ、とギルバートは心の中だけで呟く。
「ラクス……」
「大丈夫ですわ、キラ。わたくしが信用できない方をキラに近づけるはずがありませんでしょう?」
 確かに、この状態では人手があった方がいい。それも、他の連中が迂闊に文句を言えない人間が……と彼女は続ける。
 もっとも、排除したくてもそうされていることに気付かない方もいらっしゃいますが……といいながら、彼女はさりげなく視線をアスランへと向ける。もっとも、本人はその意図に気付いていないだろう。
「本当は女性の方がよいのでしょうが……少ないですから、女性は」
 残念なことに。そう言って、彼女は苦笑を浮かべた。それがどうしてなのか。あえて聞く必要はないだろう。
「それで、どなたですの?」
 改めて、ラクスがディアッカに問いかける。
「ラスティですよ」
 即座に彼は言い返した。
「あぁ。あいつなら大丈夫だな」
 それにイザークも頷いてみせる。
「人柄はとてもいい。それは俺も保証する」
 だから、安心しろ……と彼はキラに微笑みかけた。
「そうですわね。あの方なら、少なくともアスランよりは常識をご存じですし……大丈夫ですわ」
 何よりも、この四人を制止してくれる方に回ってくれるはずだ。彼女はそうも付け加える。
「……何をおっしゃりたいのですか、ラクス?」
 にこやかな口調でアスランが問いかけた。しかし、その瞳は笑っていない。
「胸に手を当ててよくお考えになってみてはいかがです?」
 即座にラクスが言い返した。その瞬間、剣呑な空気が周囲を支配する。
「ともかく、ラスティを呼んでくるか」
 ディアッカは身を翻すと足早に人混みの中に消えていく。残された二人がそんな彼の背中を恨めしそうに眺めている。
「……どうかしたのかな?」
 しかし、キラに箱の空気がわからないのだろうか。こう言いながらレイへと視線を向けた。
「居場所がわからなくなる前に呼びに行かれただけでしょう」
 さらりとレイが言い返している。
 この場合、どちらに感心をするべきか。ギルバートは少し悩んでしまった。

「ラスティ・マッケンジーです。よろしく」
 数分後、ディアッカと共に現れた相手は、そう言って微笑む。
「キラ、です」
 そんな彼に向かって、彼女はおずおずと言葉を返す。
「とりあえず、今日は傍にいるだけだから」
 まぁ、顔合わせってことで……とラスティは付け加える。その瞬間、アスランににらみつけられていた。
「……ご迷惑では」
 しかし、そんな彼の様子にキラは本気で気付いていないらしい。
「あらあら」
 そんな彼女を微笑ましそうに見つめているラクスはやはりただ者ではない。デュランダルは改めてそう認識した。







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