ラウとの通話を終えて執務室に戻ろうとしていた。その時だ。
「デュランダル君」
 背後から呼び止められる。
「何かご用でしょうか」
 こう言いながら、ギルバートは振り向く。そこにはシーゲルとアイリーンが立っていた。
「オーブの使節団からの依頼があってね……とりあえず君に確認してから、返事をしようと思ったのだよ」
 この言葉に、ギルバートは眉根を寄せる。
 同時に、ラウが何故あれほど焦っていたのかがわかってしまった。
「オーブの使節団から、ですか?」
 いったい何を、と呟くことでその表情をごまかす。
「君の所にいる二人の子供達の事だよ」
 使節の中に知己がいる。だから、是非とも話をさせて欲しいのだ。そう言っていたよ……とシーゲルは口にする。
 ラウの話を聞いていなければ無条件でOKを出していたかもしれない。そう思いながら口を開く。
「それは一体、どなたのことでしょうか」
 少し厳しめの口調で問いかければ、彼は表情を変えた。
「デュランダル君?」
「あの子達がこちらに来たのは、ブルーコスモスに狙われているからだ、ということはご存じでしょうか」
 それを無視しながら、さらに言葉を重ねる。
「一応、娘に聞いているが」
「その協力をしていたのが、アスハとサハクをのぞく三家、だそうです」
 少なくとも、自分はラウからそう聞いている、と声を潜めながら口にした。
「しかも、今でもあの子達を諦めていないとか。特に、キラは女の子ですから……」
 わざとらしく言葉を濁せば、アイリーンが表情を強ばらせる。
「ですので、アスハかサハクに繋がるもの以外は会わせないように、とあの子達を引き取ったときに頼まれているのですよ」
 ラウからは、できればその期間、彼等と会わせないように手はずを整えて欲しい。そうも付け加える。
「ですから、今、彼等を別のプラントへ向かわせようか、と考えていたところです」
 こちらに来てからアプリリウスワンしか出歩いたことがない。だから、名目としてはいいのではないか。
「……確かに、迂闊に会わせるわけにはいかないようだね」
 女性であるという理由で狙われているのであれば、アイリーンは呟く。
「しかし、正式の依頼である以上、無視も出来ないのだよ」
 どうやら向こうも断られる可能性が高いとわかっていたのだろう。だからこそ、ラウはあれほどまでに警戒していたのか。
「確か……」
 ふっと思い出したというようにギルバートは口を開く。
「歓迎レセプションで、ラクス様が歌われるとか」
 それに、評議会議員達の子女もその場に列席すると聞いていたが……と確認をするように問いかける。
「あぁ。その予定だが……」
 頷きかけてシーゲルはあることに気が付いた。
「なるほど。君の養い子なら列席してもおかしくはないか」
 そして、そこで顔を合わせるのであれば向こうも納得せざるを得ない。しかも、その後、学習という名目で他のプラントへ向かわせればいいのではないか。そうシーゲルは提案をしてくる。
「その時には、家の娘も同行させよう」
 そうすれば、他の者達は納得をするのではないか。
「なら、私の所へ来ればいいわ」
 でなければ、ルイーズの所でもいいだろう。
「そうだね。そのあたりのことは後で話し合えばいいか」
 とりあえず、あちらにはそれで納得をしてもらえる角か、確認をしよう。してもらえないときには面会を拒絶すればいい。シーゲルはきっぱりとした口調でそう言いきった。
「クライン閣下」
「あの子達も、大切な同胞だ。その大切な同胞が不幸になるような状況を見過ごすわけにはいかないからね」
 何よりも、彼等はまだ幼い。子供達を守るのは大人として当然の義務だ。
 それは、彼が父親だから、だろうか。
「安心したまえ。悪いようにはしない」
「お願いします」
 言葉とともにギルバートは頭を下げた。







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