流石に心配になったのだろう。その晩、ラウからの連絡が入った。 「心配はいらないよ。とりあえず、全ては私のところでシャットアウトするから」 学校にまでは手出しできないように手配した、とギルは続ける。 『どこまで信用していいのやら』 そんな彼に、不審を隠さずにラウが言い返してきた。 「シーゲル様のお力も借りたからね」 だから、学校側も『否』とは言えなかったようだ。そうも付け加える。 「校内でのことは、ラクス嬢が目を光らせておいてくれるそうだよ」 彼女と彼女が信用している友人達がキラの周囲に気を配ってくれるといっていた。だから、そちらも心配はいらないだろう。 「もっとも、アスラン・ザラをはじめとする者達は排除できなかったがね」 彼等は最初からあそこの生徒だ。だから、とため息をついてみせる。 「もっとも、それこそラクス嬢達に目の敵にされているようだが」 キラの側に近寄れるかどうかはわからない。そうも付け加えた。 『あの方には一目置かないといけないと言うことか』 確かに、キラの味方としてはこれ以上ない人物だとは思うが……とラウは頷いている。 「私たちよりもあの方を認めさせる方がハードルが高そうだしね」 もっとも、それは自分たちにも言えることだ。そう言ってギルバートは苦笑を浮かべる。 『既に釘を刺された、というところか』 いいことだ、とラウは笑う。 「だが、あくまでも最優先なのはキラの希望だと思うが?」 彼女が選んだ相手であれば認めざるを得ないのではないか。 『それは否定しないよ』 もっとも、とラウは笑う。 『その前にしっかりと選別させてもらうだけだがね』 自分が認められない相手は、キラと親しくなる前にしっかりと遠ざける手はずを整えるだけだ。彼はそう口にする。 『もっとも、一番遠ざけなければいけない人間は遠ざけられないのだがね』 まさか、幼女趣味があったとは、思ってもいなかったから……と付け加えたのは、もちろん、ギルバートに対するイヤミだろう。 「運命の相手ならどんな障害でも乗り越えられるものだと思うがね」 負けじとこう言って笑った。 もちろん、それなりの努力はさせてもらうが。 そう心の中で付け加えた。 「今のキラには、きっと、傍で守ってやれる人間が必要なのだしね」 だとするなら、ラウはかなり不利になるね……と口にする。 『それはどうだろうね』 にやりとラウは笑い返す。 『あの子は賢い。何故、私が傍にいられないのか、十分にわかっているはずだよ』 だから、その程度で自分が不利にはるはずがないのだ。自信満々の口調で彼はそう言った。 『その程度のことで壊れるような絆は作ってきていないからね』 出逢って数年の君と違って、といちいち引っかかるようなセリフを口にしてくれる。 本当に人の気持ちを逆撫でするのがうまい男だ。もっとも、それは自分も引けを取らない自信はあるが。 「だが、日常的にあの子達の相談を聞いているのは私だよ?」 きちんとした信頼関係を築けている。いずれは、ラウと立場が逆転するかもしれない。そう続けた。 『おやおや。そううまくいくかな?』 笑いながらラウは言い返してくる。 『第一、あの子が君をそう言う対象として見ているとは限らないよ?』 父親代わりとしてみられているかもしれない。この言葉はギルバートの不安を思い切りえぐってくれる。 「だが、それは『特別』と思ってもらえているということだろう?」 悔し紛れのようにこう言い返すのが精一杯だった。 |