エザリアらしい華やかなパーティだ、と思う。これでホームパーティだというのだから、侮れない。 もっとも、彼女たちにしてみれば自分の交友関係を知らしめる場として有効なのだろう。 「……大丈夫かな?」 しかし、キラには逆効果だった。 あまりの人数の多さに完全に萎縮している。 「はい……」 こう言って頷いてみせるものの、まるで隠れるように、ギルバートの傍に寄り添っていた。 「しかし、ここまで大がかりなものになるとは、ね」 もっと少人数だと思っていたのに、といいながら彼女の体をそっと自分の方に引き寄せた。 「本当に、これはホームパーティなんですか?」 キラを挟むように、ギルバートとは反対側にいたレイがこう問いかけてくる。 「ご本人はそのつもりらしいよ?」 もっとも、周囲がどう思っているかはわからない。ついでに、このうちの何割かは、半ば強引に押しかけてきたメンバーではないか。そうも付け加えた。 「……僕、帰っちゃダメですか?」 キラがギルバートの服の裾を握りしめながらこう問いかけてくる。どうやら、その程度の余裕は出てきてくれたようだ。 「せめて、エザリア様にはご挨拶しないとね」 最低限の礼儀として、と付け加えれば、キラは小さく頷いてみせる。 「それにしても、どちらにおいでなのか」 これだけ人数が多ければ、直ぐには見つけられない。 かといって、キラから離れるのは不安だ。 「さて、どうしたものかね」 さりげなく周囲の者達を牽制しつつこう呟く。 「せめて、ラクス嬢がいてくださればいいのだが」 そうすれば、キラも安心できるだろう。何よりも、彼女であればこのような席になれている。如才なく立ち回ってくれるだろうと思うのだ。 「ラクスも、来ているの?」 こう言いながら、キラが周囲を見回し始める。 その時だ。 「ギルバート・デュランダル様に、キラ・ヤマト嬢、レイ・ザ・バレル君、でいいのでしょうか」 いきなり問いかけられる。視線を向ければ、エザリアによく似た少年がそこにいた。 「そうですが……君は?」 おそらく、彼がエザリア自慢の息子なのだろう。それはわかっているが確認のために聞き返した。 「失礼いたしました。僕はエザリア・ジュールの子のイザークといいます。母にみなさんをご案内するように言われました」 こちらへ、ときまじめそうな表情で告げる。 「だそうだよ、キラ、レイ」 これで、エザリア様に不義理をしなくてすむね……とギルバートは微笑みながら口にした。 「案内をしてください」 そのまま、視線をイザークに戻すと、こういう。 「はい、こちらです」 こう言い返しながら、彼はキラへと視線を移動させた。 「人が多いから、はぐれないように気をつけてくれ」 そして、優しい口調と共に声をかけている。 ひょっとして、これは一目ぼれというものなのか。それとも、たんにエザリアの教育が行き届いているだけなのか、と心の中で呟く。 だが、とさらに付け加える。 目の前の少年がキラに興味を持ったことは否定できない事実だろう。 「大丈夫ですよ、姉さん。俺が一緒ですから」 そんなイザークに負けじとレイが声をかけている。 「うん」 ふわりと微笑みながら、キラが頷いて見せた。その瞬間、レイがどこか勝ち誇ったような表情をして見せたのは錯覚ではないだろう。 それがイザークを煽らなければいいのだが。 ついついそんなことを考えてしまった。 |