子供とはいえ、やはり女性は女性なのだろうか。 少し離れた場所からキラ達の会話を聞いて、ギルバートはそんな感想を抱いた。 「そう言えば、キラはどのような男性がお好きなんですの?」 不意にラクスがこんな問いかけを投げつけている。その瞬間、アスラン達の耳がダンボになったのは、きっと、気になる話題だから、だろう。 もっとも、自分もそれには興味がある。いや、レイも似たようなものなのか。課題を進める手が止まっていた。 「……好きな男性?」 だが、それらに気付いていないのか。キラは小首をかしげて聞き返している。 「そうそう。好きな人はいるの?」 なんて直球勝負なのだろうか。それがうらやましいと思うのは、普段、ねちねちとした物言いをする者達に囲まれているからかもしれない。 「好きなのは……父さんと、ラウ兄さんとレイとギルさん」 にっこりと微笑みながら、キラがこう言い返した。 「……そうじゃなくて……」 がっくりと、ルナマリアが脱力をしている。そして、何故かアスランとニコルがにらみつけてきた。 「……お父様とラウ様、それにレイ君は当然ですわよね」 ギルバートも、ある意味納得できる……とラクスが笑いながら告げる。 「身近においでの方々ですわ、皆様」 でも、その中で結婚できるのは、ギルバートだけだろう……と彼女は続けた。 「……結婚?」 想像もしていなかったのか。キラはくりんと逆の方向に首をかしげる。 「ラウ兄さんとレイとも結婚できるよ、僕」 そして、こういった。 「だって、お兄さん何じゃ……」 ルナマリアが驚いたように問いかけの言葉を口にする。 「兄さんって呼んでるけど、本当の兄さんじゃないの。レイと兄さんは本当の兄弟だけど」 ラウが一足先にプラントに来るまで一緒に暮らしていたから『兄さん』と呼んでいただけなのだ。そうキラは説明をした。 「そういえば、らうとねえさんをけっこんさせようかって、おじさんがいっていました」 ぼそっとレイがこう呟く。 「おやおや」 そんな話があったのかい? とギルバートは微笑みながら問いかける。 だが、それはどこまで本気で言っているのだろうか。他の誰かに取られるくらいなら、知っている相手と結婚させたい……と思う父親も多いと聞いた。 もっとも、婚姻統制があるプラントではあまり考えられないことだが。 それでも、と内心顔をしかめる。ラウとキラは二人とも第一世代だ。だから彼等の間に子供が得られる可能性は高い。 そう考えれば、あり得ない話でもないのではないか。 「でも、年が離れているよ?」 「そうです! あの方は立派な方ですが……キラさんと結婚するには絶対、年が離れすぎています!」 アスランとニコルが慌てたように言葉を口にし始めた。 「そんなに離れてないよ?」 しかし、キラはこう言い返す。 「どうして、そんなことを言うの?」 自分が誰と結婚をするかは、自分が決めることだ! とさらに彼女は口にする。 「でも、プラントでは……」 「僕はオーブの人間だもん。確かに、今はプラントにいるけど……安全になったら、父さんと母さんとカガリ達のところに帰るんだもん」 そう言ってキラは瞳を潤ませる。 「ちょっとあんた達! いい加減にしなさいよ」 「そうですわよ。見苦しい」 即座に女性陣があきれたように言葉を口にし始めた。 「そんなことを言ってキラを泣かすなら、もう、傍に近寄らせないようにするんだから!」 あることないこと、広めてやる! とさらにミリアリアは付け加える。 「そうですわね。アスランもニコル様も、女性をいじめてなかせる最低の人間だ、と皆に言いふらしましょう」 それがいいですわね、とラクスも頷いた。 「それは……」 「お願いですから、やめてください」 慌てたようにアスラン達がこう言ってくる。 「知りません!」 これなら、とりあえず彼等のことは放っておいてもいいのかもしれない。だが、注意を怠ることは出来ないだろう。いつ、何時、キラの中での彼等の評価が変わるか、わからないのだ。 しかし、とギルバートは心の中で呟く。 一番の難関は、やはりラウの存在かもしれない。 「さて、どうしたものかね」 とりあえず、もう少ししたら、キラの好物を買いに行ってこよう。そう考えていた。 |