そんなキラ達を、オーブ――カガリは喜んで出迎えてくれた。
 彼女のまっすぐな行為は、ラクスのそれとは違うが、キラにとっては変わらない救いだった。
 それだけではない。
 ストライクもまたこの地に眠っていた。
 フラガはそれで戦うことを希望し、キラもまたそんな彼のために細心の注意を払ってOSを整えた。

 その準備が終わるのを待っていたかのように、地球軍の宣戦布告がオーブへと投げつけられた。
 それは、アークエンジェルがオーブに逃げ込んだからなのだろうか。
 それとも、最初から奴らはそうするつもりだったのか。
 その宣言からさほど時をおかずに、地球軍はオーブ――モルゲンレーテの工場やマスドライバーの施設があるオノゴロ島へ総攻撃をかけてきた。
 しかも、圧倒的な戦力差を持って、だ。
「まだ……戦えない人が残っているのに……」
 キラはこう呟く。
 それは主に、モルゲンレーテの社員とその家族達だ。
 性急に避難を開始させた、とはいえ彼等にも技術者としてのプライドがあったのだろう。自分たちの研究の成果を地球軍に渡すくらいであればこの手で破棄する。そう言って、彼等は先ほどまでデーターの消去を行っていたのだ。
 そして、これだけの人数を運ぶための艦船の手配に少々手間取ったらしい。
 その結果が、今の状況だ。
 戦うがわからしてみれば、厄介だ、などというものではない。だが、それでも守らなければいけないのだ。
「……もう、誰も死なせたくないのに……」
 自分に彼らを守りきることができるだろうか。キラはふっと不安に襲われる。だが、すぐにその不安を振り払った。
 自分一人では不可能かもしれない。
 だが、ここには仲間達がいる。
 そして、ラクス達が与えてくれた《翼》が、そのための《力》を貸してくれるはずだ。
 第一、フラガほどのパイロットがそういるはずがない。
 だから何とかなるだろう、とどこか相手を侮っていたかだろうか。
「……こいつら……」
 本当にナチュラルなのだろうか。それとも、と考えかけて、キラはそれを放棄する。今はそんなことを考えている場合ではないのだ。
「他の機体は……ムウさん達に任せるしかないのか……」
 本音を言えばかなり不安だ。だが、一機ならともかく、三機も相手にしている以上、彼等のフォローまですることは不可能だ。
「……どこを、ねらっているんだ!」
 そのうちの一機が銃口をフリーダムではなく他の場所へと向けている。
 その軸線上にあるのは、オノゴロの港。そして、そこには今にも避難しようとしている人々がいるのだ。
「やめろぉぉぉぉぉ!」
 慌ててフリーダムをその軸線上に割り込ませようとする。
 だが、それはコンマの差で間に合わなかった。
 ミサイルが着弾したのは、小高い丘。
 そして、爆煙の後には……先ほどまでいた人々の姿はなかった。
「……何で……」
 何故、彼等まで巻き込まなければいけないのか。
 彼等は戦えない人々なのに、何故……
 何故、ここで死ななければいけないのか。
 こう考えた瞬間、キラは体の奥で何かがはじけたような感覚に襲われる。それは、以前にも何度か覚えがあるものだった。
 しかし、以前と違って、それにキラの意志が押しつぶされるようなことはない。
 逆に意識がとぎすまされ、相手の動きが確実に理解できる。
 この状況をもっと自分でコントロールできるようになれば良かったのに……そうすれば、きっと。
「何で、お前達は!」
 その怒りをぶつけるかのように、キラはフリーダムを相手の機体にぶつけていった。

 そんなフリーダムを、憎しみの瞳で見上げているものがいることに、キラはまだ気づいていなかった。