周囲の物々しさは、間違いなくアスランを警戒してのことだろう。
「……流石、と言っていいのか?」
 デュランダルの護衛として訪れたシンが、隣にいるレイに問いかける。
「それだけ、迷惑をかけられまくった……と言うことだろう」
 あるいは、これから話し合う内容の邪魔をしかねないと思っているのか。どちらかではないか。彼はそう言い返してくる。
「なるほど。と言うことは、議長の指示はそれを考えてのことか」
 アスランがそう簡単にここに来られないようにと言う、とシンは感心したように呟く。
「しかも、目的地はオーブだから、な」
 カガリ・ユラ・アスハに対する引っかかりは消えたわけではない。だが、アスランに対するあの言動は称賛してもいいように思える。
「まぁ、今のうちにできるだけ決められることは決めておくべきだろうな」
 でなければ、アスランが全てぶち壊しかねない。
 しかし、いくら彼でも正式に取り決められたことまでは壊せないのではないか。
「だといいけど」
 レイの言葉に、シンはこう言い返す。
「彼もそこまでバカではない、と思うがね」
 二人の話を苦笑を浮かべながら聞いていたデュランダルがこう言いながら立ち上がる。
「まぁ、何にせよ。話し合いが優先だと言うことは事実だろう」
 では、行こうか。この言葉に、二人は頷いてみせる。
 シャトルから下りれば、そこにはキラとラクスをはじめとした者達が揃っていた。
「わざわざのお出迎え、ありがとうございます」
 そんな彼等に向かってデュランダルがこういった。
「いえ。本来は、こちらから向かうべきだったのでしょうが……」
「わかっています。彼ならば、今、オーブですよ」
 だから、少なくともこの会談が終わるまでは戻ってこないはず……と付け加える。
「そうですわね。カガリがそう簡単に出国を許可するはずがありませんもの」
 なら、ゆっくりと話が出来るな、とラクスは頷く。
「とりあえず、ブリーフィングルームに移動しましょう」
 さらにキラがこう言って微笑んだ。
「その方が遠慮なく話が出来ますが?」
 こちらはさらに付け加えられた言葉に、デュランダルは「そうだね」と微笑んでみせる。
「ご案内、ねがえるかな?」
「えぇ。こちらです」
 デュランダルの言葉に、キラは先に立って歩き出す。それを合図に、この場に集まっていたクルー達は一部のものを除いて自分たちの仕事へと戻っていった。
「……あんたも居残り組?」
 自分たちと共にブリーフィングルームへ向かう一団の中に地球軍の大佐だと言っていた人間を見つけて、シンは呼びかける。
「記憶が戻ったからな」
 元々、自分はこの艦アークエンジェルのクルーだったのだ、と彼は苦笑と共に言い返してきた。
「それについては、そっちの坊主も知っていると思っていたが」
 さらにレイを見つめながら付け加える。その瞳の中に複雑な感情が見え隠れしているのは錯覚ではないだろう。
「あんたも、最初にレイと会ったときのキラさんのような視線でこいつを見るんだな」
 何か複雑な理由があるのだろうか。
 そう思いながら言い返す。
「……まぁ、いろいろあるんだよ」
 苦笑と共に彼はそう口にする。
「そうだろう?」
 さらに彼はレイへと話題を振った。
「そうですね、ムウ・ラ・フラガさん」
 これまた複雑な声音でレイが呼びかける。
「……わけわかんねぇ」
 彼等がどのような関係なのかは知らない。でも、とシンはフラガと呼ばれた人物を見つめた。
「でも、キラさんが同席を認めて、ラクスさんが許可出したんだろ。なら、俺には何も言う必要はないよな」
 キラを傷つけない。皆がそう判断しているのだろうから……と心の中だけで付け加える。
「いいこだな、お前は」
 そんなシンの態度はどう考えているのか。彼は笑いながらこういった。
「俺は子供じゃねぇ!」
 子供扱いをされても文句を言えないのは、マルキオとカリダだけだ。そう思いながらシンは言い返す。
「オコサマだろう? まだまだ」
 キラより若いんだから、と彼は笑う。
「……諦めた方がいいぞ、シン」
 相手をするだけ時間の無駄だ。そう言われてシンは彼を無視することに決めた。



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