|
『とりあえず、お帰り……と言うべきなんだろうな』 ニヤリ、と笑いながらカガリがモニターの中で笑う。その瞬間、フラガの頬がひきつったように見えたのはキラの錯覚ではないだろう。 「それよりもカガリ……そちらは大丈夫？」 ブルーコスモスの残党が何かをしていないか、と言外に問いかける。 『そちらの方は何もないな、今のところ……もっと楽しいものはたくさん見つかったが』 セイランの連中、どれだけ不正をしていてくれたんだ……と呟く彼女の声が怒りで震えている。 「まぁ、よろしいではありませんか。徹底的に叩けて」 かわいらしく微笑みながらとんでもないことを言ってくれるラクスに、周囲の者達は皆苦笑を浮かべた。 「あら、当然でしょう。キラに不埒なことをしようとしたおバカさんにはそれ相応のお仕置きが必要だと思いますし」 『いわれてみればそうだな……国外追放など、甘いか』 自分たちで壊したものは自分たちで作り直して貰おう……とカガリも同じような表情で口走ってくれる。 『もっとも、プラント側との話し合い次第だが』 公式での話し合いの前に内密で話し合いたいと打診が来ているのだ、と彼女は続けた。 「それは構わないのではありませんの？」 と言うよりも、事前に大西洋連合に対するあれこれを決めておくのは当然ではないか。ラクスはそう言い返す。 『私の方は当然だが……デュランダル議長が話し合いたいと言っているのはお前とキラだ』 どうする？ と彼女は問いかけてきた。 「……会った方がいいんだろうね」 自分に関しては理由がわかっている。だから、とキラは心の中で呟く。 「そうですわね。お会いしなければなりません。フラガ様が戻ってきてくださいましたから、懸案が一つ片づきましたし」 この言葉に、カガリの表情が変わった。 『ラクス、お前……』 「それが一番よいことだ、と二人で結論を出しましたでしょう？」 一番の厄介ごともそれで片づくはずだ。キラのことも、いい方向へ向かうだろし……とラクスは微笑み返す。 「僕？」 何故、ここで自分の話題が出てくるのか。そう思いながらキラは聞き返す。 「そうですわ、キラ」 『個人的に言えば、私たちにとって一番優先すべきなのはお前のことだからな』 だから当然のことだ、とカガリも言う。 「……何で……」 どうして彼女たちがそんなことを言うのかがわからない。 「愛されてるな、坊主」 そんな彼の背中をたたきながら、フラガがこう言ってくる。 「お前さんがみんなの幸せを祈るように、お嬢ちゃん達はお前の幸せを祈っているってことだろう」 他のみんなもそうだし、と彼は続けた。 「ステラ達にもそう言われただろう？」 どうやら、先ほどの会話はしっかりと彼の耳に届いていたらしい。小さなため息とともに頷いてみせる。 「ですが、今はそれを考えている場合ではないと……」 やらなければいけないことはたくさんあるから、とキラは言い返す。 「お前さんはそれでもいいって。だが、お嬢ちゃんたちがお前さんのことを考えるのは、お嬢ちゃん達の自由だからな」 あきらめろ、と彼は告げた。 『確かに、キラのフォローは任せて大丈夫そうだな』 ニヤリ、と笑いながらカガリは頷く。 「えぇ。アスラン何かよりもよっぽどしっかりとフォローして頂けますわ」 そう言うことだから、とラクスは彼女に言葉を返す。 「お願いしても構いません？」 『わかった。あちらには直接お前らに連絡を取れ、と返答しておく』 ついでに、あれの監視を強めろと、付け加えておくか……と彼女は笑った。 「それが良いですわ。きっと、飛び出そうとしているはずですもの」 そのようすがめに見えるようだ、とキラはため息を吐く。 「シン君達、苦労しているんだろうな」 小さな声でそう呟く。 「って言うか、完全に害虫扱いだな、アスラン」 フラガがあきれたように付け加えた。しかし、それを否定できる者は誰もいない。 「まぁ、アスランだから」 そう言うしかないキラだった。 |