自分がいなかった間、いったい何が起きていたのか。それを聞き終わったところで、フラガはため息を吐く。 「やっぱ、あのせいか」 どう考えても、キラの責任ではないのに……と彼は呟く。 「と言っても、あいつの性格じゃそう考えるか」 回りがあれこれ言っても無駄だろう、と彼は続ける。 「なるほどね。かなり複雑な事情があるようだね」 しかし、何故、フラガが知っているのか……と彼は問いかけてきた。そのストレートな物言いは相変わらずだな、と思う。そして、彼がそんな態度を取るのはキラを心配しているからだろう。 「まぁ、俺も当事者、みたいなもんだからな」 もう一人、今はいないクルーゼも……と付け加える。 「これに関しては、我が家のプライベートだから、つっこまないでくれると嬉しいが……」 キラは成り行きで知ってしまったが、とため息をはき出した。 「……キラのことを考えれば、教えてもらわないといけないような気がするが……」 「それを言うと、どうしてもキラの事情にも触れないといけないんだよ。あいつ、話してないんだろう?」 キラが知られたくないと思っていることを勝手に教えるわけにはいかない。フラガはきっぱりと言い切る。 「もし、虎さん達が知っているとあいつが気付けば、姿を消しかねねぇしな」 だから、これに関しては言わない。 この言葉に、バルトフェルドは深いため息を吐く。 「本気で厄介なないようなようだね……まったく、俺たちが知らないのに、あちら側に知っている可能性がいる人物がいる、というのは気に入らないが……あいつにいなくなられるのはもっとまずいか」 妥協するしかないのだろうね、とそう付け加える。 「……キラはそのことを?」 「知っていると思うよ」 それでも信用しようとしているのならば、そう判断して構わない人間なのだろう。どこか忌々しげに彼は続けた。 「……何か気に入らないことでも?」 「まぁ、ね」 それこそ、こちらのプライベートだ……と彼は言い切る。 「ですが、あの方は完璧にあれを制御してくれていますわよ」 いきなりラクスの声が耳に届いた。 「……嬢ちゃん……」 一応、男同士の話だったはずだなのだが……と思いつつ、彼女に呼びかける。 「あぁ。あれか。確かに、そのおかげでキラの負担は減っているな」 それだけでもいいとするか、とバルトフェルドはため息を吐く。 「あれというのは、アスランの坊主か?」 ザフトの軍服を着ていた記憶があるが、とフラガは二人に視線を向けた。 「えぇ。あちらの様子を見てくるようにと命じられたくせに、何故かザフトの一員になって戻ってきましたわ、彼は」 こちらの状況がどうなっているのか知らない状況で、キラとカガリの行動を思い切り非難してくださいました……と怒りを押し殺すような低い声で彼女は告げる。 「しかも、キラの地雷に思い切り踏み込んでくださいましたの」 いくらお仕置きをしてもしたりないほどですわ……と彼女は笑う。 「……嬢ちゃん?」 何か、その背後からまずいオーラが吹き出ているような気がするのは錯覚だろうか。どうやら、アスランはキラだけはなく、彼女の地雷も踏んだらしい。 「……と言うことは、カガリ嬢ちゃんの鉄拳制裁も受けていると言うことか」 この二人がこれだけ怒りまくっているのだ。彼女だけが暴漢をしているはずはない。 「もちろんです」 にっこりと微笑みながらラクスは頷く。 「フラガ様もカガリの鉄拳制裁とわたくしのお仕置きを受けたくはありませんでしょう?」 かわいらしい微笑みと裏腹にとんでもないセリフを彼女は口にしてくれる。 「あ、あぁ……」 彼女たちに逆らってはいけない。そんなことをして無傷でいられるのはキラだけだ。 「では、ブリッジまで付き合ってくださいませ」 「仰せのままに」 こう言い返しながら、フラガは腰を浮かせた。 |