地球軍にとってはこれが最後の命綱だからだろうか。
 守備隊の反撃はかなり激しいものだった。キラも迂闊には目的地に近づけない。
「どうすれば……」
 いや、フリーダムだけであれば十分に取り付ける。だが、そうしてしまえば他の者達がどうなるか。
 そう考えていたときだ。
『何ぼんやりとしているんだ!』
 耳にバルトフェルドの叱咤が届く。
「バルトフェルド隊長」
『お前がここで皆を守っても意味はない! やるべきことをさっさとやってこい』
 自分たちはお守りがいるような年齢ではない! と彼は続けた。
「ですが……」
 それでも、とキラは言い返す。
『みんな覚悟を持って戦場に出ているんだ。それに、お前がさっさとあれを壊してくれた方が、こっちとしてはありがたいな』
 しかし、ネオにまでこう言われては反論が出来なくなってしまう。
『大丈夫。お前が帰ってくるまで、アークエンジェルもエターナルも沈ませない』
 この言葉に聞き覚えがあるような気がするのは錯覚だろうか。
「わかりました」
 ここでそれについて悩んでいても仕方がない。
 そして、仲間達を信じていないわけではないのだ。だから、とキラは頷いてみせる。
「直ぐに終わらせます。だから、誰も死なないでくださいね」
 言葉とともにキラはフリーダムの操縦桿を握り直す。
 そのまま、視線を目標へと向けた。
「最大出力なら、いけるかな?」
 ミーティアの、と呟きながら一機に機体を加速させ得る。
 そんな彼の動きに気が付いたのだろう。地球軍のMSが彼の進路を塞ぐような動きを見せた。
 反射的にビームライフルの引き金を引く。
 一瞬の閃光が周囲を照らす。次の瞬間、それらの機体が遠ざかっていく。
「ごめんなさい」
 そう言いながら、キラはさらに先へと進む。
 近づけば、それがどれだけ大きいものかがわかった。建設途中で放棄されたコロニーが元になっているとよくわかる。
 本来であれば、人々が平和で暮らす場所になるはずだったのに。
 それを、こんな風に戦いのための道具にするなんて。
「こんなもので、人の心を支配できると思っているのかな?」
 あきれたように小さな声で呟く。
 恐怖で人を支配できるのは一瞬ではないか。それよりも、時間はかかっても話し合いで妥協点を探る方がいいような気がする。
 なのに、それをしないのは、きっと、コーディネイターを人間だと思っていないからだろう。
 自分たちコーディネイターを生み出したのは彼等なのに。しかし、それも便利な道具を作り出したという感覚なのか。
 しかし、多くのナチュラルはそう考えていないはずだ。
 だから、彼等の影響を排除しなければいけない。
 そのためには、これを破壊しないと……とキラは自分に言い聞かせるように心の中で呟く。
 次の瞬間、意を決したようにミーティアのビームソードを起動する。
「……これは、あってはいけないものだから」
 そう言うと共に、一息に中継器を切断しようとした。もちろん、それを地球軍が許してくれるはずがない。
「邪魔をしないで!」
 言葉とともに相手に向かってミサイルを発射する。
 それに、敵の動きが一瞬鈍った。
 それを見逃さず、キラはビームソードで中継器を両断した。



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