「……想像はしていたとはいえ、ちょっとやりすぎじゃないか、ルナ」
 あきれたようにレイが口にする。
「そうだね。どうしてこういうことになったの、ラクス」
 その隣で、キラも目の前の相手にこう問いかけた。
「……どうしてでしょう。わたくしもよくわからないのですが……気が付いたら、こうなっていましたわ」
 おかしいですわね、とラクスは首をかしげる。
 他の人ならば『可憐だ』と思える仕草も、キラには見慣れたものだ。
「ラクス……僕には通用しないよ」
 ため息とともにこう言い返す。
「そうでしたわね。でも、これらは、皆、必要なものですのよ?」
 自分の分だけではない。マリュー達から頼まれた分もあるのだ、とラクスは言う。しかし、それを鵜呑みに出来ないと言うこともわかっていた。
「……どれがマリューさん達の分でどれがラクスのかは聞かない方がいいんだろうね」
「キラにはかないませんわ」
 ラクスの言葉からキラの想像が当たっているのだとわかってしまう。
「とりあえず、どうやって持って帰ろう……」
 配送サービスも使えないから、自力で何とかしなければいけないのだろうけど……とキラはため息を吐く。
「皆で運べば運べない量ではありませんわ」
「それで、万が一の時にどうするの?」
 恐らくシン達は気付いているだろう。自分たちへと向けられている視線に、だ。
「何かあったときに、直ぐに対処を取れる人間がいないと困るよ?」
 違う? とキラは問いかけた。
「怒っておられますの?」
 要するにキラは、とラクスは逆に聞き返してくる。
「気付かなかったの?」
 にっこりと微笑みを向けた。
「……ですが……」
「息抜きもかねているとはいえ、メインは捜索だって知っていたでしょう?」
 どう考えても逆転しているよね? とキラは言い返す。
「キラ……わたくしは……」
「おいていっていい?」
 申し訳ないが、後でオーブの駐在員に取りに来てもらう? と問いかける。
「……そんな!」
 キラの言葉に、ラクスが絶句した。しかし、ここであっさりと彼女の行動を認めるわけにはいかないから、と心の中で呟く。妥協するにしても、せめてある言葉を言って貰わないと、と思うのだ。
「だって、そうでしょう? それに、そろそろタイムリミットだし」
 じゃ、連絡をするね……とキラは端末へと手を伸ばす。
「意地悪です、キラ」
 これを置いていくのは、とラクスは付け加える。
「そう?」
 持って行けないんだから、仕方がないでしょう? と言い返す。そんな彼に何かを言いたげなシンの表情が見える。だが、視線だけで口を挟まないで欲しいと告げた。
「今がどのような状況か、知っているでしょう?」
 さらにキラは問いかけた。
 しばらくの間、沈黙が周囲を支配する。これまでかな、とキラは本気で端末を操作しようとしたときだ。
「……そうでしたわね」
 ラクスが小さなため息とともに言葉を口にする。
「わたくしがはしゃぎすぎました。申し訳ありません」
 だから、運ぶのを手伝ってくれないか……と彼女は言う。
「最初からそう言っていればいいのに」
 とりあえず、自分とラクスとルナマリアで手分けをして運ぼう。他の人たちは周囲の警戒を頼む、とキラは告げる。
 それに、彼女はほっとしたような表情を作った。
「バルトフェルド隊長にはきちんと話をするからね」
 忘れていた、とキラは付け加える。
「キラ!」
 それにラクスは慌てたように叫んだ。



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