「ヴィアの研究記録?」
 レイの言葉に、デュランダルは驚きを隠せない。
『はい。シンには意味がわからなかったそうですが……テロメアに関わることだ、とキラさんが言っていたと……』
 それに彼は言い返してくる。
『ギルと俺を信頼できるかどうか。それを判断できるまで内緒にしていたのだ、ともおっていました』
 それは当然だろう、とデュランダルも思う。
 下手な人間がそれを手に入れたらどうなるのか。
「信頼を得るには、それだけの時間が必要だった、と言うことだね」
 それでも早い方ではないだろうか、と心の中で付け加える。きっと、レイが頑張ってくれたから、だろう。あるいは、傍にシンがいたからか。
「どちらにしても、その信頼を無にするようなことだけはしないようにしないといけないだろうね」
 レイのためにも、キラのためにも、だ。
『はい、ギル』
 レイもこういって頷いてみせる。
「では、君達はオーブのマスドライバーを使わせて貰いなさい。宇宙にあがってから本体と合流できるよう、手配しておこう」
 その指揮官はイザークだ。彼等がいれば、きっとアスランを止められるのではないか。そう考えてのことだと言うことは否定しない。
『わかりました』
 レイも何かを察しているのか。静かに頷いてみせる。
「では、気をつけて。無事に戻ってきなさい」
 君だけではなくキラ達も、とデュランダルは告げた。
『はい、ギル。必ず戻ります』
 きっぱりとレイが言い返してくる。そのまま通信が切れた。
「おやおや」
 せわしないことだね、とデュランダルは苦笑を浮かべる。
「まぁ、今の状況では仕方はないのかな?」
 早々にジプリールの身柄を確保するか、でなければ消去しなければいけない。でなければ、ブルーコスモスの残党がまた一つに結集してしまう可能性がある。
 何よりも、あの子に残されている時間がどれだけあるのか。それがわからないのだ。
 恐らく、キラもそのことに気付いているのだろう。
 彼の性格を考えれば、もっと慎重に自分たちのことを見極めたかったはずだ。
 しかし、今決断をしたのは、少しでも遅れればレイがどうなるのか。それを知っているからだろう。
「それもこれも、君が彼に傷を付けたから、なのだろうがね」
 ラウ、と口の中だけで今はいない友人の名を呼ぶ。
「そして、ムウ・ラ・フラガの存在が、今になって見つかるとは……それも君の采配かな?」
 自分たちの手の届かないところで高みの見物をしているのはいいが、そろそろ退屈の虫が疼いた、と言うところか……と苦笑と共に付け加える。
「どちらにしても、私たちにとっては朗報だ」
 少しでも、レイが長くいきられると言うことは……と呟く。
「後は、彼にも幸せになって欲しいものだね」
 キラに関しては自分たちにも責任があるのだから、とデュランダルは付け加えた。
「しかし、アスラン・ザラがここまで使えないとは思わなかったね」
 彼がもう少しましな人材であれば、もっと話は簡単だったのではないか。
 いや、彼は優秀なのだろう。ただ、キラに関してはたがが外れるだけなのではないか。
 しかし、それはキラにとっては幸福に結びつかない。
「……とりあえず、ジュール隊長とエルスマン君には頑張って貰おうか」
 アスランがザフトに戻るきっかけを作ったのは彼等だ。だから、と付け加える。
「私は、大西洋連合をどうするか。それを決めないといけないだろうしね」
 マルキオに連絡を取って、内密にカガリと話し合いをしなければいけない。
 他にも、色々と決めなければならないこともある。
「ゆっくりと休んでいる暇もないかもしれないね」
 だが、目標がある今は我慢できるのではないか。
「これで、ラクス嬢がプラントに戻ってきてくだされば、私は多少手を抜けるのかもしれないが」
 それは彼女の意志次第だ。だから、と呟きながら、端末へと手を伸ばす。
「私だ。至急、マルキオ氏と連絡を取ってくれ」
 まずは、戦後の青写真だけでも作っておかなければいけないだろう。そう考えて、こう告げた。



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