「……お前さんも、俺の関係者?」
 そう言って彼が視線を向けたのはレイだった。
「そっちの坊主もどこ書きにかかるんだが、お前さんはそれ以上だからな」
 あまりいい関係ではなかったような気もするが……と彼は続ける。
「……残念ですが、俺自身があなたにお会いするのは初めてですよ」
 もっとも、自分と同じ顔の誰かが記憶を失う前のあなたに会っていた可能性は否定しないが、とレイは言い返す。
「……そうだね。レイ君はあの人とそっくりだから……」
 キラもそう言って頷いて見せた。
「その人は、あなただったかもしれない人と、浅からぬ因縁があったそうです」
 さらにこう付け加える。
「……なるほど、な」
 そう言うことか、と彼はあっさりと頷いて見せた。
「で? 坊主は?」
 自分とどんな関係だったのか、と彼は視線を向けてくる。
「何故、それを?」
 気にならないと言ったのではないか。逆にそう聞き返す。
「あの時はな」
 流石に、自分をたたき落としてくれた相手にそんな感情を抱いていいものか。そんなことを考えていたからな、と彼は続ける。
「ただ、お前さんを見ているとどうしても家の連中に対する気持ちと似たようかな感情がわいてくるだけで」
 困った門だね、と彼は苦笑を浮かべた。
「……僕もその方と別の因縁があっただけです。それと、あなたに色々と押しつけられただけですね」
 その時のことを心のどこかで覚えていたのではないか。キラは冷静な口調を作りながらそう言った。
 だが、内心は違う。
 本音を言えば、もっとしっかりと思い出して欲しい。自分のことだけではなくマリューをはじめとする者達のことも、だ。
 しかし、それはここで入ってはいけないセリフだ、と言うこともわかっている。だから、唇を噛んで耐える。
「それだけじゃないような気もするが……まぁ、良いことにしておくか」
 小さなため息とともに彼は一度顔を伏せた。だが、直ぐにキラを見つめる。
「頼みたいことがあるんだが」
「何でしょうか」
 叶えられないこともあるが、と付け加えながら彼を見つめ返す。
「お前ら、宇宙にあがるんだろう? 俺も連れて行ってくれ」
 しかし、彼の口から出たのは予想もしていなかったセリフだった。
「……あの……」
 何故、そんなことを言い出したのか。
「無謀だ、というのはわかっている。俺は地球軍の将官だからな」
 だが、と彼は続ける。
「それでも、行かなければいけない。何なら、拘束してくれても構わないぞ」
 何故、そこまで言うのか。
「……理由をお聞きしても構いませんか?」
 それがわからなければ判断のしようがない。キラはそう言い返す。
「納得できたなら、僕の権限でアークエンジェルへの乗艦を許可させて頂きます」
「キラ! 無謀だ」
 彼の言葉を聞いた瞬間、アスランがこういって騒ぐ。
「静かにしてください!」
「あなたに反対する権限はありません」
 それを二人が制止している。
「いいのか? 後ろの坊主達はそう言って騒いでいるが」
「構いません。彼等はザフトの人間ですから」
 自分はオーブの人間だし、とキラは微笑む。
「ここに彼等を連れてきたのは、ひょっとしたら、あなたが何かを思い出すか、と思ったからです」
 この言葉に、彼は苦笑を浮かべる。
「ご期待に添えなかったようだな、それに関しては」
 だが、もう一つの方は努力してみるか、と彼は口にした。もっとも、うまく表現できるかわからないとも。
「お願いします」
 そんな彼に、キラは静かに微笑んで見せた。



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