キラが戻ってきたのはそれから直ぐのことだった。そのおまけには、アスランの姿もある。
「……いい格好だな、アスラン」
 レイとシンに引きずられるようにして立っている彼に向かってカガリはそう告げた。
「お前の方が捕虜らしいな」
 しっかりと拘束されている姿を見れば、と続ける。反論が帰ってこないのは、しっかりと猿ぐつわをされているからだろう。
「仕方がありませんわ」
 平然とラクスが口を開く。
「ここで下手に騒がれては、後々困りますもの」
 にっこりと笑いながら告げられた言葉にキラだけではなく他の者達も曖昧な笑みを浮かべるだけだ。
「とりあえず、あの方の部屋の前に行ったら外して差し上げます」
 ただし、キラに何かした時点で命の保証はしません……とラクスは続ける。
「……ラクス、それは……」
 ちょっと、まずいのではないか。キラがこういって彼女を見つめた。
「大丈夫ですわ。ようは殺さなければよろしいのでしょう?」
 いや、そう言う問題でもないと思う……とカガリは心の中で呟く。
「……ラクスさん、本気で怒っているなぁ」
 平然とこう口に出来るシンは大物なのか。
「シン」
 実際、レイの頬は見事にひきつっている。
「大丈夫だよ。ラクスは本気でアスランを殺したりはしないから」
 苦笑と共にキラが二人に声をかけていた。
「そうだな。命に支障はないだろうが、精神的には責任取らないぞ」
 ラクスの言葉はそれこそ凶器だからな、とカガリは心の中だけで付け加えた。もっとも、それが向けられるのは圧倒的にアスランだけだが。
「しかし、アスランも懲りればいいものを」
 オーブにいたときですらさんざん経験しているはずなのに、とため息を吐く。
「ひょっとして、プラントに行ってから頭でも打ったか?」
 そのせいでただでさえゆるんでいたねじがさらにゆるんだのではないか。そう付け加えてしまう。
「自分たちが知っている範疇ではないかと」
「でも、戦闘中に何かあったんなら、あり得るんじゃないでしょうか」
 二人は即座にこう言い返してくる。
「どちらにしても、こんなのが《FAITH》だなんて、認めたくないですけどね」
 むしろ、キラがザフトに来て自分たちの上司になってくれた方がよかったのに……と言うシンの気持ちもわからなくはない。
「やらないぞ」
 即座にこういってしまう。
「キラの側にいたいなら、お前がオーブに戻ってこい」
 さらにこう付け加える。
「ですが、俺はプラントに移住した身ですし……」
「気にするな。その位どうにでもなる」
 元はと言えば、セイランが馬鹿なことをしでかしてくれたことが原因だ。だから、とカガリは笑う。
 それに、シンはマルキオの養い子の一人でもある。許可を出すのは簡単なことだ、と付け加えた。
「それよりも、移動するぞ」
 バルトフェルドが戻ってきたのを確認してカガリは話題を変える。
「そうだね。いつまでもシン君達を借りているわけにはいかないだろうし……」
 自分たちもしなければいけないことがあるから、とキラも頷く。
「……とりあえず、それらしいシャトルが着きに言ったことだけは確認できたぞ」
 詳しいことはさらに調べさせているが、とカガリはそれに言い返した。
「……月、ですか?」
 レイが慎重に問いかけてくる。
「そうだ。あぁ。帰りにデーターを持って行け」
 そうすれば、少しは手助けになるだろう。この言葉に彼等は頷いて見せた。



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