とりあえず邪魔が入らないところ、と言うことで談話室を一つ、占拠することになった。
「どういうつもりだ、ハイネ!」
 不本意だが、そこにはアスランも同席している。もっとも、彼がキラに飛びつけないように、手足を拘束されて、だが。
「お前が馬鹿なことをしないように、だ」
 話し合いの邪魔をされたら困る、と真顔で付け加える。
「俺がそんなことを」
「するだろう、お前なら」
 アスランの反論を即座に切り捨てた。
「……まぁ、あれは放っておいて、こちらはこちらで話を進めましょう」
 レイの冷静さが微妙に怖い。そう思ってはいけないのか……とシンは心の中で呟く。
「キラさんは、それでは軍のお仕事をされるわけですか?」
 だが、彼の質問に関しては自分も気になっている。だからあえてつっこまない。
「とりあえず、ね。今回は仕方がないからカガリから押しつけられた階級を受けるけど……この戦争が終わったら返上する予定だよ」
 自分はあくまでも民間人で、アスハとは関係がない人間だから……とキラは続ける。
「でも、アスハ代表とご姉弟では?」
「オーブの場合、血筋よりも理念の継承の方が優先されるんだよ」
 カガリはウズミの養子だし、彼によって教育をされてきたからこそ、アスハの首長なのだ。それはロンド・ミナも同じだといえる。
 だが、自分はあくまでもヤマト家の子供だから……とキラは微笑む。
「カガリは動けない。だから、代わりに軍の旗印になる人間が必要だ。それがたまたま僕だっただけだよ」
 軍人達がそれを認めてくれる。そして、力を貸してくれると言っているから……と彼は続けた。
「もっとも、ザフトにとっては不本意なことかもしれないけど」
 この言葉にシンは首をかしげる。
「何で、そんなことを言うんですか?」
 意味がわからない、と言外に付け加えつつ、問いかけた。
「三年前の戦争を、まだ忘れていない人が多いから」
 アークエンジェルも自分も、ザフトと敵対していたし、と言葉を重ねられる。
「そんなことは……」
「……ない、とは言えないだろうな」
 シンの言葉を遮るかのようにレイが言う。
「だが、逆にだからこそ、ありがたいと思う人間もいるだろうよ」
 さらにハイネがこういってきた。
「第一、今、お前さん達を敵に回してもいいことはない。それはわかっているからな」
 苦笑と共に彼は続ける。
「そうですね。ギルもそう考えているはずです」
 だから、プラントはコーディネイターの権利も認めているアスハが統治をしているオーブとは戦う意志を持っていない。レイもそう言って頷く。
「そうですか」
 それならばいいのだが、とキラは微笑む。
「……それと、アスラン」
 ふっと思い出したようにキラが口を開く。
「何? キラ」
 その瞬間、アスランが見せた表情は何だったのだろうか。
「……時間、取れるかな」
「キラの望みなら、いつでも」
 いいのか、と言いたくなるくらい、アスランは即答をしていた。それに、キラの方が面食らっているほどだ。
「何かあったのですか?」
 キラの方からそんなセリフを言うなんて、と思いつつシンは疑問を口にする。
「ちょっと、確認して欲しいことがあるんだ。本当はディアッカにも付き合って欲しいくらいなんだけど……無理だろうからね」
 流石にそこまでワガママを言うことは出来ないだろう。キラは苦笑と共に付け加えた。
「何で、ディアッカ……」
 アスランがこう問いかける。自分だけではダメなのか、とその表情が告げていた。
「あの人と一緒にいた時間は、ディアッカの方が長いから」
 だから、とキラは言い返す。
「あの人?」
 誰のことだ、とシンは思う。
「……ひょっとしたら、生きていたのかもしれない……」
 彼が、とキラは呟く。
「……まさか、あの人か?」
 この言葉に、アスランが驚きを隠せないという表情を作った。
「そう。生きていたのかもしれない……ムウさんは」
 パーソナルデーターは一致したから、とキラは呟く。
「でも、記憶がないんだ」
 だから、と言う彼の表情がとても辛そうだった。



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