「そうか……キラ君が、ね」
 レイからのメールに目を通したところで、デュランダルは小さな声でこう呟いた。
「それほどまでに君は彼を傷つけた、と言うことかな、ラウ」
 それとも別の理由なのだろうか。
「確認しに行きたいところだが……流石に、そう簡単に動ける状況ではないからね」
 ようやく、ブルーコスモスの本拠地が判明したのだ。そこを叩くことが優先だろう。
「ひょっとしたら、それに参加できないと言うことで、君達は文句を言うかもしれないね」
 だが、オーブからブルーコスモスの影響を排除することも大切なのだ。そのためにはカガリに彼の国を掌握してもらわなければいけない。
 だが、やりすぎては内政干渉と言われかねないこともわかっている。
「そのあたりのことは、ラクス嬢がうまくやってくださるだろう」
 でなければ、バルトフェルドか。
 どちらにしても、彼等であれば的確な判断を下してくれるはずだ。
 そして、パイロット達にとって歴戦の勇者と言えるキラ達の戦いを傍で見ていることはいい勉強になるだろう。
「と言うあたりで、周囲をごまかすか」
 詭弁だが、と笑いながらメールを閉じる。
「さて……話し合いをしてこないとね」
 それが自分の仕事だ。そう呟くとデュランダルは立ち上がった。

 アークエンジェルの最後のクルーが合流したのは先ほどのことだ。
「……しかし、アスランは完全に御邪魔虫だな」
 シンがぼそりとこう呟く。
「確かに」
 それは否定できない、とレイも頷いて見せた。
「何か、理由があるのか?」
 アスランから少しでも遠ざけたい、と彼女たちが考えているのか。自分たちの傍に座っているキラに向かってハイネが問いかけている。
「……ちょっとね」
 それに、キラは微妙に言葉を濁す。
「……何かあった、と言うことでいいんだな?」
 内容には触れずに事実だけをハイネは確認をする。
「……前の戦いの時、僕たちは敵だったこともあったから」
 どこか哀しげな表情でキラはそう言う。その事実はレイも知っている。つまり、その時期に何かあったのだろう、と判断をした。
「そうなんですか」
 カガリが諸手をあげて彼女の到着をよろこんだわけだ、とシンが感心したように頷く。
「まぁ、あれであいつが大人しくなってくれるなら、俺としてもありがたいがな」
 少しは楽になる、とハイネが口にした。
「まったく……いっそのこと宇宙に打ち上げてやりたいよ」
 さらに彼はそう続ける。
「……それでも、アスランなら帰ってきそうですけど」
 キラがぼそっと呟くように言う。
「あり得そうですね、あの様子なら」
 シンだけではなくレイもその言葉に頷いてみせる。
「それよりも、みなさんはこのままこちらに同行でよいのですか?」
 ふっと思い出した、と言うようにキラは問いかけてきた。
「と言うと?」
「近々、ザフトが大きな作戦を行う予定だ、と教えてくれた方がいるので」
 情報元は内緒にさせてくださいね、とキラは苦笑を浮かべる。
「……まぁ、ここには重要人物が二人もいるからな」
 だいたい想像がつくか、とハイネは呟く。
「でも、帰還命令が出てないからな。あちらはあちらでなんとかできると思っているんだろう」
 キラ達をあちらに確保される方が怖い。そう続けるハイネに、レイも頷いてみせる。
「それに、こちらの作戦が成功したら残党が逃げ込もうとするのはオーブでしょうし」
 だからこそ、カガリに掌握してもらわなければいけない。そう言えば、キラは「そうだね」と言い返してくる。
「それにしても……アスランもあきらめが悪い」
 女性陣に勝てるわけがないのに、と彼はため息を吐く。
「まぁ、アスランだしな」
 それでいいのだろうか。そうも思うが、ある意味納得してしまう……と言うのも事実だった。



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最遊釈厄伝