「どうして、キラさんは戦っているんですか?」
 別れる間際、シンがこう問いかけてくる。
「どうしてって……守りたいから、かな?」
 キラは笑みと共にそう言い返す、
 何をと言われる少し困る。だが、この気持ちだけは間違いはないと胸を張れることだ。
「なら……」
 しかし、シンは首をかしげると言葉を綴る。
「キラさんのことは、誰が守るんですか?」
 今まで、誰もそんな問いかけをしてこなかった。
 いや、ここ数年の間、誰もそんなことを言ってくれなかった、と言う方が正しいのか。
 戦争に巻き込まれた頃は、そう言ってくれた人がいなかったわけではない。だが、彼は今はこの世界にいない。それは、もう誰もそう言ってくれないというのと同じではないか。
「僕は、強いから」
 だから、大丈夫だよ……と微笑み返す。
 その半分は自分に言い聞かせているようなものだが。
「……強くても、一人で戦うのは無理ですよ」
 だが、彼は即座にそう言い返してくる。
「わかっているけどね……でも、カガリもラクスも、守るべき人だし……バルトフェルド隊長には僕よりも二人を優先してもらわないといけないから」
 アスランがいてくれれば素コスはましだったかもしれない。だが、今の彼はちょっと、と思ってしまう。
「……俺じゃ、ダメですか?」
 おずおずと、シンが問いかけてくる。
「シン君?」
 いったい何を、と思ってしまう。
「確かに、俺は今、ザフトの軍人だし……命令によっては傍にいられないかもしれないけど……せめて、傍にいる間だけでも守らせてください!」
 役者不足かもしれないけど、とどこか恥ずかしそうに彼は付け加える。
「ありがとう」
 そう言ってもらえて嬉しい。それは間違いなく、今の自分の本音だ。
「でも、無理はしないで」
 軍人である以上、命令一つで理不尽とも言える状況に追い込まれることだってあるのだから。そう続ける。
「わかってます。でも、俺がキラさんを守りたいんです!」
 シンはきっぱりと言い切った。
「シン君……」
「それだけは、覚えていてください」
 こう言い残すと、彼は体の向きを変える。そして、そのままかけだしてしまう。
「君は……」
 本当にいいのだろうか。
 自分にそう言ってもらえる価値があるのか。
 そうは思う。でも、そう言ってくれる人がいるだけで嬉しいと思う。
「バカだよ」
 こういいながらも、キラは自分の口元がほころんでいたことも自覚していた。

「キラさんと何を話していたんだ?」
 部屋に戻ったところでレイがこう問いかけてくる。
「レイ?」
「何か、深刻そうな表情をしていたからな」
 気になっただけだ、と彼は付け加えた。それに、シンはどう言い返すべきか、と悩む。だが、隠していても直ぐにばれるような気がする。
「お前のこと」
「……俺?」
「そう」
 色々と聞かれたから答えられる範囲で答えた……と彼は口にする。
「何故」
「……何か、考えていることがあるんだと思う」
 それが何であるのかまではわからないが、とシンは付け加えた。
「でも、さ。これから一緒にいれば、お前がいい奴だってわかると思う」
 そうすれば、きっと、キラが教えてくれると思う……と言って笑った。
「まぁ、邪魔が入らなければ、の話だけど」
 そう付け加えたのは、最近、ますますにらまれるようになったからだ。
「……アスランか……」
 レイもシンが誰のことを言っているのか、直ぐにわかったらしい。ため息とともにこう言ってくる。
「あの人は、どうしてああなんだろうな」
「それこそ、俺が知りたい」
 本当に、と言えばレイも頷いて見せた。



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